“太平洋ゴミベルト”の実態調査

2009.07.31
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プラスチック汚染への世間の関心を高めるため、今夏、2つの探検隊が太平洋のゴミの渦巻く海域を訪れる予定だ(写真はゴミで覆われた東南アジアの海岸)。

 カリフォルニア州とハワイの間に位置する「太平洋ゴミベルト」には、世界中で捨てられた何百万トンものプラスチックゴミが海流の影響で密集している。

Photograph courtesy Wallace J. Nichols
 北極やエベレストほどの魅力は無いかもしれないが、この夏の探検家たちの間でホットな場所といえば、テキサス州の2倍もの大きさがある太平洋のゴミ海域、通称「太平洋ゴミベルト」だ。 カリフォルニア州とハワイの間に位置する「太平洋ゴミベルト」には、世界中で捨てられた何百万トンものプラスチックゴミが海流の影響で密集している。毎年生産される2億6千万トンのプラスチックのうち約10%は海に捨てられるが、その大部分が太平洋ゴミベルトのような海流が渦巻く場所で停滞してしまう。

 今年の夏、問題の規模を検証して深刻な海洋汚染の実態を世界に知らしめるため、2つの探検隊がゴミベルトを目指して出帆する予定だ。

 海洋保護に取り組むNPO「プロジェクト・カイセイ(Project Kaisei)」のダグ・ウッドリング代表は、「海に行ったことがある人なら、だれでもプラスチックゴミを見たことがあるだろう。人のまばらな奥地の海にも捨てられている」と話す。同プロジェクトの予定では、今週にも2隻のボートを出発させるという。

 まずカリフォルニア大学スクリップス海洋研究所が所有する全長53メートルの「ニューホライズン号」がカイセイのメンバーを乗せて8月2日にサンディエゴから出帆した後、探検隊のフラッグシップである全長46メートルの「カイセイ号」が8月4日にサンフランシスコから出帆する。

 ゴミベルトを見れば人間による環境破壊がどこまで進んでいるのかがよくわかるが、海域全体がプラスチックの表層で覆われているわけではない。この場所に集まるプラスチックのうち70%は海中に沈んでいるためだ。しかし視界に入らないとは言え、生態系には確実に悪影響を及ぼしている。

 大部分のプラスチックは小さな破片に分解されて海水中にあふれ、海洋生態系にとって有害な物質となる。エサと間違えてプラスチックの破片を食べた魚や鳥が大量に死んでいるのだ。

 プロジェクト・カイセイは調査の手がほとんど入っていないこの海域のゴミの量と状況を数値化しようとしているが、これについてスクリップス研究所のジム・デュフォー氏は次のようにコメントしている。「海域に到達するプラスチックの量や、それが小さな破片に分解される量、海洋生物に摂取される量などを、化学的に調べる必要がある。その数字は想像もつかない」。

 同プロジェクトでは海をきれいにする方法も研究する予定だが、ただゴミを拾い集めればよいわけではない。「難しい仕事だ。外洋では発砲スチロール容器のようなゴミの下に魚が生息している。単純に網をかけるだけでは、守るべき漁業資源の多くを逆に殺してしまうことになりかねない」とデュフォー氏は話す。

 プロジェクト・カイセイのウッドリング氏は香港を拠点とする環境技術分野の起業家でもある。同氏によると、海洋に到達するプラスチックは不法な海上投棄よりも、一般家庭との関連性の方が深いという。流れてくるゴミの80%は陸地に由来しているからだ。「海岸線から数キロ以内の川、水路、排水溝や浜辺から流れて来ている」と同氏は語った。

 世界中の多くの地域、特に開発途上国では、日常生活にすっかり溶け込んでいるプラスチックのボトルや容器を処理する手段がない。

 プロジェクト・カイセイでは、このようなリサイクルされていない圧倒的大多数のプラスチックを何とかして利用できないかと考えている。プラスチックゴミを燃料や衣料品に、言い換えればより利益率の高い形態に転換する技術があれば、人々は収入を得るために喜んでプラスチックを拾い集めてくれるかもしれない。

「実現可能だと思う。現状の周知が必要だが、海洋の有害物質や破壊といった悲観的な話だけではない。新しいアイデアや技術を試す大きなチャンスが広がっている」とウッドリング氏は話している。

Photograph courtesy Wallace J. Nichols

文=Brian Handwerk

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