アフリカの汚染物質飛来でカリブのサンゴに危機

2008.07.14
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カリブ海のベリーズ沖でサンゴを横切って泳ぐイエローテイルスナッパー。2008年7月、アフリカから大量の農薬や汚染物質が飛来して世界中の海に到達しており、脆弱なサンゴ礁の脅威となる可能性があることを専門家が指摘した。

Photograph by Nicole Duplaix/NGS
 科学者たちは、アフリカのサハラやサヘルの乾燥地域から大量のダストが飛来し、カリブ海やアメリカ南東部の海を汚染している可能性があると指摘している。ダストを含んだ雲が、金属や農薬、微生物などの汚染物質を運んでいるのだ。サンゴ礁や海洋生物は既に海水温度上昇のストレスを受けているが、こうした物質も破壊的な影響を及ぼしかねない。 アメリカ地質調査所の生態学者、ヴァージニア・ガリソン氏は、フロリダ州フォートローダーデールで開催された「第11回 国際サンゴ礁シンポジウム」で、複数のサンプル採取地点の大気質データから得られた興味深い結果を発表した。例えば、アフリカからダストが飛来した時期のカリブ海の大気サンプルを調べると、同じ地点のほかの時期に比べて、バクテリアや菌類などの微生物が2倍から3倍多く含まれていた。

 フロリダでは、アフリカのダストの影響で大気が汚染され、アメリカの大気質基準を下回る場合もある。アフリカのマリ、カリブ海のアメリカ領バージン諸島、トリニダード・トバゴで大気質調査を行ったところ、DDTの分解産物であるDDEをはじめ、微量の農薬が見つかった。DDTは環境蓄積や発がん性の疑いから広く使用が規制されているが、一部のアフリカ諸国では現在でも殺虫剤として使われている。農薬は特にサンゴ礁にとって脅威となる。サンゴの生殖や受精、免疫システムを妨げる可能性があるからだ。

 オーストラリア海洋科学研究所のアンドリュー・ネグリ氏は、「アフリカのダストに関連する農薬は主に殺虫剤だ。殺虫剤は宿主であるサンゴに直接影響を与える可能性がある。調査で特定した殺虫剤のうちクロルピリホスとエンドスルファンの2種類は、ごくわずかな濃度でもサンゴの幼虫が海底へ定着するのを減少させる」と話す。

 ガリソン氏は、大気は世界中を移動しており、われわれは皆、1つの巨大な大気システムを経験しているという見方を示す。「ダストを含んだ気団がアフリカからカリブ海を通ってアメリカ東部に到達し、そこで急に勢力が弱まる。しかし、気団は一部のダストを含んだままアメリカ北東部に移動し、汚染された雲と混ざる。さらに北大西洋を越えてヨーロッパに渡り、ヨーロッパでも汚染雲を少し取り込んで、再びアフリカに戻る。つまり、ダストがそもそもどこから来たのかは、わからなくなる」。

 ガリソン氏は、アフリカの農薬のように特定の汚染物質が特定の地域に関連している場合もあるが、大気質の問題の責任を1つの地域にだけ負わせることはできないと言う。「私たち全員に責任がある。どんな物質を空気に放出しているのか皆で監視してゆく必要があるだろう」とガリソン氏は述べている。

Photograph by Nicole Duplaix/NGS

文=Brian Handwerk

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