インテリジェント・デザインと矛盾する古代魚

2008.07.09
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頭の片側に両目も持つヒラメの一種、イエローテイルフラウンダー。この特徴は現在のカレイ目魚類すべてに共通している。最古のカレイ目魚類は頭の両側に目を1つずつ持っていた。最新の化石研究によると、現在の目の位置まで移動したのは段階的な変化であり、長く支持されてきた突然変異の考え方とは相いれないという。インテリジェント・デザイン論の支持者は、化石記録にみられる突然変異が高度な知性による新しい生物形態の創造を示す証拠だと主張している。

Photograph by Jeff Rotman/Getty Images
 2つの目が両方とも頭の片側にあるという奇妙な姿をしているカレイ目の魚類には、その進化を説明する上でミッシングリンク(注1)が存在したが、それを埋める発見が発表された。インテリジェント・デザイン(注2)の支持者は嫌な気分になるかもしれない。 5000万年前の化石のCTスキャンにより、頭の両側に目を1つずつ持つ原始的なカレイ目魚類と、シタビラメやオヒョウなど頭の片側に両目を持つ現在のカレイ目魚類との間を埋める中間的な生物種が発見された。これまでカレイ目魚類の進化は突然変異によるものと考えるしか選択の余地がなかったが、今回発表された最新の研究では、変化は突然に起こったものではなく段階的に生じたものであり、自然淘汰を通じた進化に適合すると結論付けている。

 カレイ目魚類の化石記録では進化形態に断絶が存在しており、長い間「hopeful monster(将来性のある怪物)」という考え方によって説明されてきた。hopeful monsterとは、突然だが有益な突然変異の恩恵を受けた未知の生物を指す科学用語で、その変異が子孫に受け継がれるとされる。ある遺伝学者が1930年代にhopeful monsterによる説明を導入して以来、現在のカレイ目魚類の起源は、突然変異とhopeful monsterの考え方を用いて説明するのが通例となってきた。インテリジェント・デザインの支持者(以下「ID論者」)は、カレイ目魚類が瞬間的に突然変異したという考え方を採用して、神または人智を超えた高度な知性が意図的に新しい生物形態を創造した証拠だととらえてきた。ID論者は、多くの場合、中間形態の生物種の化石記録が比較的少ないことを生物種の意図的創造の証拠として挙げている。

 突然変異説を否定する今回の新発見をもってしても、ID論者が考えを変える可能性は低そうだ。Institute for Creation Research(ICR)の科学監修者で動物学者のフランク・シャーウィン氏は、「今回の発見には興味深い点が一切ない」と述べる。「私たちは、創造された生物種の中で多少の変種が存在することは否定しない。今回の最新報告は、カレイ目魚類の段階的進化の証拠とはとても言えない。カンブリア紀(約5億4200~4億8800万年前)以降、魚はずっと魚のままだ」とシャーウィン氏は付け加える。「カレイ目魚類の中にさまざまな変種がいても私たちには問題ない。私たちが聞きたいのは『魚がいかにして魚でない祖先から誕生したのか』ということだ」。

 左右非対称な目の位置はカレイ目魚類の生存にとって有利に働くので、高度な知性を感じさせるというのが論点だ。この特徴により、カレイ目魚類は海底に伏せながら両目を使って上を見ることができる。周囲の環境に合わせて「上」側の外観をカモフラージュするのと同様、適応戦略として欠かせないものである。今回の研究チームの一員で古生物学者のマット・フリードマン氏は、ロンドンやウィーンなど各地の自然史博物館を訪れ、CTスキャンを用いて最古のカレイ目魚類の化石を分析した。そして、いくつかの化石標本で、頭の片側だけ目が上方に移動していることを発見した。フリードマン氏は「最終的に、両目が片側に完全に移動した種が、生存競争の中で中間形態の種に勝利したのだろう」と話す。

注1)ミッシングリンク:進化の過程を証明するために必要なまだ発見されていない中間的な生物種の化石。

注2)インテリジェント・デザイン:宇宙や生命は、人知を超えた偉大な知性によって設計され創造されたとする説。アメリカの聖書根本主義者から生まれた創造科学(creation science)から神という表現を除いて宗教色を薄めているのが特徴。

Photograph by Jeff Rotman/Getty Images

文=Anne Minard

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