骨製フルート、人類最古の楽器と判明

2009.06.24
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シロエリハゲワシの翼の骨で作られた古代のフルート(別角度からそれぞれ撮影。拡大部は指穴)。世界最古の楽器かもしれないという。

 ヨーロッパに定住した初期の現生人類にとって、音楽は社会的結び付きを深める重要な道具だったとする説があるが、2009年6月に発表された研究によると、ドイツの洞窟で発見されたこの4万年前のフルートはその有力な証拠であるという。同じヨーロッパに分布し、生存競争のライバル関係にあったネアンデルタール人は音楽がないせいで絶滅したのだろうか。

Photograph by H. Jenen, courtesy University of Tubingen
 ハゲワシの骨でできたフルートがヨーロッパの洞窟で発見された。世界最古の楽器である可能性が高く、人類による音楽の起源がさらに時代をさかのぼることになる。 ヨーロッパに定住した初期の現生人類は音楽を奏でることができたため、ネアンデルタール人より戦略的優位に立つことができたとする説があるが、このたび最古と判定された4万年前のフルートは、一緒に発見されたマンモスの牙でできたフルートの破片とともに、その説を裏付ける証拠となる。

 ドイツにあるテュービンゲン大学の考古学者ニコラス・コナード氏率いる研究チームは2008年、ドイツ南部にある石器時代のホーレ・フェルス洞窟遺跡で骨製フルートの破片を複数発見した。

 フルートには5つの指穴が開けられ、送風口にはV字の切り込みが入り、楽器としてほぼ完全な形をしていた。直径はちょうど8ミリで、本来の長さは34センチほどあったとされる。

 近くのギーセンクレステルレ(Geissenklosterle)遺跡で以前に発見されたフルートの破片は約3万5000年前のものだったが、今回新たに発見されたフルートは現生人類がこの地域に定住を始めたと考えられる約4万年前のものであるという。

 ヨーロッパに定住した初期の現生人類(ホモ・サピエンス)は文化レベルを向上させて生き残り、同じヨーロッパに分布していた近縁のネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)は絶滅の道をたどった。その差を生んだ文化の1つが音楽だったのかもしれない。

 当時の現生人類はコミュニケーションや社会的結び付きを強める手段として音楽を使っていたと研究チームは考えており、発見された古代のフルートはその証拠であるとしている。

 コナード氏は、「いま、私たちの生活の中で音楽は不可欠なものになっている。教会でも、パーティでも、個人で楽しむにしても、音楽の影響力は非常に大きい。人は音楽を聴いて大きな喜びや深い悲しみを感じ、笑ったり泣いたりするものだ。そのような感情によって、人と人との結び付きはいっそう強くなる」と説明し、次のように指摘した。

「では石器時代はどうだったのか。やはり当時の現生人類の社会でも、ネットワークを維持し強化するために、同じように音楽が重要な役割を果たしていたのではないだろうか。社会的組織の編成や行動戦略の決定に音楽が役立っていたと思われる」。

 コナード氏は新発見のフルートは現生人類の手で作られたものであり、現在知られている限り最古の楽器であると発表したが、これには異論も存在する。

 例えば、スロベニアの石器時代の遺跡で発見されたホラアナグマの骨を、ネアンデルタール人が作ったフルートであり、今回の発見よりもさらに古い時代のものだとする説がある。だが、形があいまいで楽器と断定しきれないため、多くの考古学者は懐疑的であり、コナード氏も「その説は誰も真剣には取り合わないだろう」と話している。

 たとえそうだとしても、新発見のフルートがネアンデルタール人の手で作られた可能性については完全には否定できないというのが考古学者たちの見解だ。

 それに対してコナード氏は次のように話す。「フルートと一緒に美術品が発見されているが、中でも胸が大きく誇張されたマンモスの牙の女性像などは、ネアンデルタール人が作ったものとは到底考えられない。フルートの周辺で見つかったものは、これまでにネアンデルタール人の遺跡で発見されたことがないものばかりだ。そう考えると、フルートは現生人類が作ったものとする方が自然だと思う」。

 このように、現代人はフルートの製作者が誰なのかということに関心を寄せているが、当の先史時代の製作者たちが最も気に掛けていたのはその音色だろう。先週、プロの音楽家がこのフルートの複製品を演奏する機会があったという。その場にいたコナード氏は次のようにコメントしている。

「ドイツ国歌や“アメージング・グレース”が低音でゆったりと演奏されるのを聴いて、この先史時代のフルートは現代の楽器とはまったく異なるものであることがわかった。ただ、もしかしたら練習不足のせいもあるかもしれないがね」。

 今回の研究成果は、「Nature」誌オンライン版に掲載されている。

Photograph by H. Jenen, courtesy University of Tubingen

文=James Owen

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