旧石器時代の洞窟はコンサートホール?

2008.07.02
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フランス、ブルゴーニュ地方にあるアルシー・シュル・キュールの洞窟に残されたマンモスの壁画。メインの洞窟内でもっとも音響の良い場所に描かれている。旧石器時代の洞窟のうち、この洞窟を含む少なくとも10カ所で、音響効果の高い場所にまとまって壁画が描かれていることが分かった。この結果、旧石器時代の儀式では音楽と絵画が一体化していたことが示唆された。この研究は2008年7月に専門家により発表された。

Collection La Varende, photograph M. Girard/courtesy Iegor Reznikoff
 有史以前の人々が洞窟に壁画を残したことはよく知られているが、その際、絵を描く場所に、音が自然に響きやすい場所が選ばれていた。フランスの旧石器時代の洞窟を新たに分析したところ、明らかになったという。 調査を行ったパリ大学の音響学専門家、イゴル・レズニコフ氏が、馬やバイソン、マンモスなどの絵画が描かれた洞窟を調査した結果、そのうち少なくとも10カ所が人間の声や楽器の音の増幅や変化に適した場所であることが分かった。同氏は「フランスのアリエージュ県ニオー村の洞窟では、目立った壁画のほとんどが音の響きやすいサロンノワールという場所に描かれている。サロンノワールではまるでロマネスク様式の教会のような音の響きを楽しめる」と話す。このような場所は自然のパワーが満ちている場所と考えられていた可能性があり、壁画の描かれている洞窟が宗教的、魔術的儀式の場であったという説を裏付ける。

 また、洞窟の音響効果と壁に描かれた動物の種類には、ある程度関係があるのではないかという興味深い仮説も立てられた。この説の検証は非常に困難ではあるが、例えば「ある音の響き方が得られる空間には馬を描くといった対応関係があったのかもしれない」とレズニコフ氏はいう。

 イギリスのシェフィールド大学で旧石器時代の壁画を専門に研究するポール・ペティット氏は「レズニコフ氏の説によって、数々の洞窟で謎とされてきた壁画の配置場所に説明が付くかもしれない。多くの洞窟で、壁画は特定の場所にまとまっており、手当たりしだいに描かれたというよりは、意図的に場所を選んで描かれたように見える。絵を描くのに適した壁面なのに何も描かれていない場所もあるし、壁画がまとまって描かれている場所では音の響きも良いことが多い」と語る。

 実際に絵画の描かれている洞窟からは、例えば骨でできたフルートや、回転させるとリズミカルにヒューと鳴る骨と象牙でできた「ローラー」という楽器などが発見されている。

 また、洞窟によってはまれに極めて様式化された踊るようなポーズの女性や、半人半獣の魔術師のような謎の人物がヨガに似たダンスをする姿が描かれている場合もある。「これは当時、ダンスと絵画が結び付いていたことを示している。この場合、壁画は特定の儀式を記録したものなのかもしれない。こうした儀式が静寂の中で行われていたとは考えにくい」とペティット氏は述べている。

Collection La Varende, photograph M. Girard/courtesy Iegor Reznikoff

文=Ker Than

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