旧石器時代の洞窟はコンサートホール?
2008.07.02
また、洞窟の音響効果と壁に描かれた動物の種類には、ある程度関係があるのではないかという興味深い仮説も立てられた。この説の検証は非常に困難ではあるが、例えば「ある音の響き方が得られる空間には馬を描くといった対応関係があったのかもしれない」とレズニコフ氏はいう。
イギリスのシェフィールド大学で旧石器時代の壁画を専門に研究するポール・ペティット氏は「レズニコフ氏の説によって、数々の洞窟で謎とされてきた壁画の配置場所に説明が付くかもしれない。多くの洞窟で、壁画は特定の場所にまとまっており、手当たりしだいに描かれたというよりは、意図的に場所を選んで描かれたように見える。絵を描くのに適した壁面なのに何も描かれていない場所もあるし、壁画がまとまって描かれている場所では音の響きも良いことが多い」と語る。
実際に絵画の描かれている洞窟からは、例えば骨でできたフルートや、回転させるとリズミカルにヒューと鳴る骨と象牙でできた「ローラー」という楽器などが発見されている。
また、洞窟によってはまれに極めて様式化された踊るようなポーズの女性や、半人半獣の魔術師のような謎の人物がヨガに似たダンスをする姿が描かれている場合もある。「これは当時、ダンスと絵画が結び付いていたことを示している。この場合、壁画は特定の儀式を記録したものなのかもしれない。こうした儀式が静寂の中で行われていたとは考えにくい」とペティット氏は述べている。
Collection La Varende, photograph M. Girard/courtesy Iegor Reznikoff