アメリカ、ワシントン州シアトルにある動物園で2000年5月に撮影されたメスのコモドオオトカゲ。植物に隠れて様子をうかがっている。

 2009年5月、インドネシアの固有種であるこの希少な爬虫類が、毒を使って獲物の命をゆっくりと奪うことが確認された。以前までは、コモドオオトカゲに襲われた動物は唾液に含まれている毒性の細菌に感染し、敗血症を起こして死に至るものと考えられていた。

Photograph by Barry Sweet/AP
 コモドオオトカゲには毒があり、噛み付かれた獲物はその毒に犯されてゆっくりと死に至る。この事実が今回初めて科学者たちによって確認された。 これまでは、コモドオオトカゲの口内で増殖している細菌が、高い毒性を持ち致死性の原因であると考えられていたが、今回の発見ではこの通説は完全に否定されている。

 コモドオオトカゲの獲物はその攻撃から逃れることができても、一度でも噛み付かれていれば次第に衰弱し、死を迎える。この獰猛な肉食動物は傷ついた獲物を追跡し、体が動かなくなったところをゆっくりと食すのである。

 インドネシアの固有種であるコモドオオトカゲの口内では複数種の細菌が増殖しており、噛み付かれた獲物は敗血症で命を落とすと長い間考えられてきた。しかしオーストラリアのメルボルン大学で生物の毒を研究しているブライアン・フライ氏は、「これまで信じられてきた細菌説は完全な作り話だ」と述べている。

 フライ氏の研究チームは、動物園から譲り受けた2匹のコモドオオトカゲの頭部を切断し、その毒を生化学的手法で調査した。2匹はともに、末期疾患のため安楽死させなければならない状態にあった個体である。

 調査の結果、コモドオオトカゲの毒に感染した動物は急速に血圧が低下し、失血が進んでショック状態になり、戦うことができないほど衰弱してしまうことが判明した。毒の成分のうち、血圧を低下させる作用のある一部の化合物は、西オーストラリアに生息し世界で最も強力な毒を持つといわれているヘビ、“ナイリクタイパン”の毒にも劣らないほどの効力があった。

 研究チームのメンバーは今回の発見に衝撃を受けたが、フライ氏はそれほど驚かなかったという。同氏は以前にイグアナ、アシナシトカゲ、オオトカゲなどを調べたことがあり、その際にこれらのトカゲも毒を持っていることが確認されていたからだ。

 トカゲは現在5000種以上が生息しているが、そのうちの100種近くに毒があると同氏は推測している。「その中でも、コモドオオトカゲが毒を送り込む仕組みは非常に精巧にできている。爬虫類の中では最も複雑な毒管システムだ」と話した。

 ヘビの毒管は通常は1本であり、それが毒牙につながっているが、コモドオオトカゲの場合は歯の間に複数の毒管が配置されているのである。「しかしこの構造では、ヘビほど効率的には毒を送り込むことができない」と同氏は指摘する。

 コモドオオトカゲは、牙を食い込ませて毒を直接注入するわけではない。激しい攻撃を繰り返す過程で、噛み付いて引っ張るような特殊な動作を行い、傷口に毒を流し込む。相手に裂傷を負わせるギザギザの鋭い歯と猛毒の合わせ技で獲物を仕留めるのだ。「コブラの武器はその猛毒だけだが、コモドオオトカゲは複数の武器を組み合わせて使うことができる」とフライ氏は解説する。

 今回の発見から、コモドオオトカゲの古代の近縁種であるメガラニアも、同様の「傷に毒を流し込む」手法で獲物を倒していたと推測される。メガラニアは体長約4メートルもあった巨大なトカゲであり、約4万年前のオーストラリアに生息していた。

 今週発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載されているフライ氏の研究論文に基づいて考えれば、メガラニアは史上最大の有毒動物だったことになる。

Photograph by Barry Sweet/AP

文=Carolyn Barry