隕石と小惑星の関係を初めて実証

2009.03.25
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2008年10月7日未明、スーダン上空に現れた“輝く飛行機雲”。地上37キロで爆発した小惑星「2008 TC3」が残した「痕(こん)」と呼ばれる現象である。

 2009年3月に発表された研究によると、2008 TC3の隕石を発見したという。隕石の“親”が特定されるのは世界で初めてのことだ。

Images courtesy Mohamed Elhassan Abdelatif Mahir (Noub NGO), Dr. Muawia H. Shaddad (Univ. Khartoum), Dr. Peter Jenniskens (SETI Institute/NASA Ames)
 地上で発見される隕石は、小惑星などの天体が地球の大気圏に衝突して爆発した後の残骸だが、隕石から元の小惑星を突き止めることは通常は不可能である。しかし最新の研究によると、世界で初めて“親”のはっきりした隕石を発見できたという。しかも、その隕石は非常に希少価値があるようだ。 2008年10月初頭、アメリカのアリゾナ州で実施されている観測プロジェクト「カタリナ・スカイサーベイ(CSS)」で用いられている自動望遠鏡が、トラックほどの大きさの小惑星「2008 TC3」が地球に向かってきている姿をとらえた。

 すぐさま、世界中の天文学者が望遠鏡の照準をその小惑星に合わせた。およそ20時間追跡を続けたが、残念ながら衝突直前に地球の影に隠れて見えなくなってしまった。小惑星は予測通り、スーダン上空で大気圏に衝突し、高度37キロで爆発し砕け散った。

 アメリカのカリフォルニア州にある地球外知的生命体探査(SETI)研究所の流星天文学者ピーター・ジェニスケンス氏は、「この小惑星の隕石を絶対に見つけようと思った。それまで出自のはっきりした隕石が発見された例は存在しなかった」と今回の研究の動機について語っている。

 思惑通りに運ぶ見込みはほとんどなかったが、ジェニスケンス氏は、スーダンにあるハルツーム大学の天文学者ムアーウィア・シャッダード氏の協力の下、学生たちを動員して“隕石拾い”を展開した。

 結果はなんと大当たりで、握りこぶし程度かそれより小さな黒色の岩石が多数見つかることになる。「非常に壊れやすい物質で、従来の“隕石コレクション”には並んでいなかったものだ」とジェニスケンス氏は話す。

 採取した隕石の性質から“親”の小惑星も珍しい種類であろうことが想像できる。今回の発見は太陽系の起源に関する新たな手掛かりをもたらす可能性がある。

 アメリカ、テキサス州ヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センターの宇宙鉱物学者マイケル・ゼロンスキー氏は、「すべての関係がつながった完全な証拠を手に入れたのは初めてのことだ。今回の隕石は、小惑星の理解を大幅に推し進める鍵となる」と話す。

 2008年10月6日、現地時間午前5時45分、スーダン北部の空は2008 TC3の上げる炎で明るく輝いた。イスラム教徒にとっては朝の礼拝の時間だった。

 スーダン北部のナイル川沿岸地域から目撃情報が相次いだ。「あまりの明るさに礼拝を邪魔された」とか「ロケットミサイルと思い、地面に伏せた」といった多数の体験談の中で、ある鉄道の駅から寄せられた情報は特別な意味を持っていた。隕石が地面で跳ねた音が聞こえたというのである。

 12月、ジェニスケンス氏とシャッダード氏は学生を引き連れ、人里離れた駅周辺の砂漠地帯を隅から隅まで調べ始めた。何度か徹底調査を重ねた結果、2008 TC3の一部だった隕石が全部で280個見つかった。

 最初に見つかった47個の隕石について研究報告がまとめられており、その詳細は3月26日発行の「Nature」誌に掲載されている。小惑星全体は重さ約8千キログラムと推定されており、隕石47個はその4キロ分に相当する。散り散りになった隕石の発見範囲は最大で30キロメートルほど離れていた。小惑星の爆発時にかなりの速度で小片が放出されたことが示唆される。

 隕石を分析した結果、橄欖石(かんらんせき)という鉱物の層の中に、極小のダイヤモンドが含まれていることが判明した。したがって、この隕石はF型小惑星出身のユレイライトという希少な種類の可能性が高いという。F型小惑星は特殊なタイプとして知られており、小惑星に存在する割合はわずか1.3%だけだ。

 ほとんどの小惑星は46億年前に生まれたままの姿で今日も存在しており、構成する物質も変化していない。ただし、中には巨大な体のために衝突を繰り返し融解した隕石もある。その場合、重い鉄が核部分に沈み込み、ほかの鉱物が表面に浮上するようになる。そして、F型小惑星は中間的な性質を持っている。部分的に融解しているが、残りの部分は形成時の鉱物のままである。

 また、小惑星の色は太陽からの距離によって変化する。アメリカにあるメリーランド大学カレッジパーク校のルーシー・マクファデン氏は、「小惑星に関する最も単純な一般法則は、“色が黒いほど時代が古い”というものだ。しかし、ユレイライトはこれに当てはまらない。おそらく今回の小惑星は、直径数百キロメートルの惑星レベルの大きさを持つ巨大小惑星から分離したものだろう」と話す。

 2008 TC3が地球に接近する間、天文学者たちはその軌道を解析した。その結果、はるかに大きなF型小惑星「1998 KU2」の軌道と一致していることがわかった。したがって、1998 KU2は2008 TC3の“親”である可能性が高い。隕石たちはその“孫”となるわけだ。

 アメリカにあるテネシー大学ノックスビル校の地質学および隕石分析の専門家ハリー・マクスウィーン氏は、今回の研究を受けて次のように話す。「小惑星と隕石サンプルの関係を明確に体系化することに成功している。これは世界で初めてのことだ。今回手に入る情報は、NASAが膨大な費用をかけて小惑星まで出かけて入手するものと同じ価値を持つ」。

Images courtesy Mohamed Elhassan Abdelatif Mahir (Noub NGO), Dr. Muawia H. Shaddad (Univ. Khartoum), Dr. Peter Jenniskens (SETI Institute/NASA Ames)

文=Anne Minard

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