文学の歴史は「戦いの歴史」だった!

 現在、「娯楽」と考えられることが多い「文学」。読書は多くの人が趣味としていますし、数々の文学作品は映画やテレビドラマ、アニメの原案になっていて、エンターテインメントの根幹をなすものの一つです。
 『ビジュアル 教養大事典』では、文学を28ページにわたって解説しています。紀元前2000年代に作られた粘土板に刻まれた『ギルガメシュ叙事詩』から、2007年に最終刊が発売された『ハリー・ポッター』シリーズまで、4000年にわたる文学の歴史を通観していますから、取り上げている作品の数は限られていますし、個々の作品の解説も簡単なものです。

 しかし、通観することで見えてくることもあります。その一つが、「文学はいつも、それが生まれた時代の何かと戦ってきた」ということです。

 紀元前2000年代にシュメール(現在のイラク)で作られた『ギルガメシュ叙事詩』では、主人公であるウルクの王ギルガメシュは「死すべき運命」と戦い、永遠の生命を求めて旅に出ます。古代ギリシャで花開いた悲劇は、人間が「神」に抗うことで起こります。聖書などの宗教的なテキストは古くから文章の形で編さんされてきましたが、それに対抗するものとして、個人の主観的感情が、古代ローマの叙情詩に描かれるようになりました。

 ヨーロッパでは、中世には華やかな宮廷文学が席巻しましたが、近代になると、「度重なる戦争」への批判や風刺が文学作品に現れます。代表的なものに、英国の作家トマス・モアの『ユートピア』や、ミルトンの『失楽園』があります。

 18世紀になると、「キリスト教会」や「統治者」からの支配を耐えがたいと考える人々が増え、自らの人生を自分で決めたいという欲求が高まります。その代表的な存在が、ドイツの哲学者カント。数々の著作で「自分自身の理性を用いる勇気をもつ」ことを訴えました。
 個性とリアリズムが求められ、天才が渇望されたのもこの時代です。代表的な存在は、詩人のバイロン。英国の貴族でありながら、中東を旅し、ギリシャ独立義勇軍に参加してオスマン帝国と戦い、一匹狼として自由に生きた彼は36歳の若さで亡くなりますが、生前から注目の的だったそうです。