番外編 研究をめぐる不思議な縁について

「僕はプリンストン大学のグラント教授のところでポスドクをやっていたんだよ」と単純な種明かし。まさにグラント夫妻の「弟子」なのだった。ポスドク時代には、ダーウィンフィンチについての論文も書いている。

 ぼくが「例えば、今後何10年も乾燥した天気が続くと、新しい種が生まれるだろうか」などと素朴な質問をすると、ケラーさんは「新しい種なら、隣の研究室に行けば見られるんじゃないかな」と言った。

シンポジウムで大勢に向けて講演をする清水さん。(写真クリックで拡大)

 さて、いったい何を言われているやら、である。

 新しい種、ニュー・スピーシーズなるものが、隣の研究室にいるというのだから。

 それが、清水健太郎さんの研究室だった。本文中でもちらりと言及したがパートナーの理恵さん(清水(稲継)理恵さん)も、同じ研究室の共同研究者。なにかプリンストン大学で進化や自然選択を研究するグラント夫妻を彷彿させた。

「新種なら植物部屋で栽培していますよ。スイスの山間のウルナーボーデン村というところで、この150年間のうち、たぶん20世紀になってから、進化したとされているものです」と在室だった清水健太郎さんは請け合った。

 清水健太郎さんとの、非常に長く、刺激的な対話の始まりはまさにこれだった。このとき、駆け足の日程の中で聞きかじるだけに終わったが、なにかとても大切なテーマであることは確信した。そこでさらに1年後訪ねてやっとたっぷりとお話を伺うことができたのが今回の連載である。飯田さんのロボット研究室訪問時から、1年半。3回目のチューリッヒだった。

ルーカス・ケラーさんと清水健太郎さん。(写真クリックで拡大)