「両方やりたいなら自分がやるしかないので、大学院のときはミクロの生物学の研究室に行って、ポスドクでマクロの生物学を勉強して、組み合わせるっていうふうにやっていこうと思いました。それで、まずは植物の分子遺伝学をやるミクロ系のところに行ったんです。シロイヌナズナっていうモデル生物の研究がちょうどさかんになっていて、ゲノムを全部読むプロジェクトが始まっていました。最初は何年かかるかわからないって言われたぐらいなんですけども、大学院が終わる前、2000年には読み終わりました。本当にちょうどモデル生物が楽しいっていう時期だったんですよね」

 モデル生物というのは、育てやすさや、研究のしやすさ、研究の関心をひく特徴などから、多くの研究者が集中的に研究するようになったものだ。研究のための系統が管理されたり、いち早く全ゲノムが解読されたり、研究資源を集中的に投下して掘り下げられてきた。シロイヌナズナは代表的なモデル生物で、植物ではイネ、コムギ、タバコなどもそうだ。昆虫ではショウジョウバエやカイコ、哺乳類ではマウスやラットなど。DNAシークエンサーなどが使えるようになって、分子生物学的な手法がどんどん発展した時代、モデル生物の探究は生物学の最先端だった。

 清水さんもその時期、まさにシロイヌナズナを使って、花粉がめしべの柱頭についた後、どうやって卵細胞(雌性配偶体)があるところまでたどり着くか、細胞メカニズムの研究をしていた。結論としては、「他の種の花粉がついても、めしべの中で行き先がわかんなくて迷ってしまって、雌性配偶体のところにたどり着かない」ということだそうだ。細胞間の認識分子の違いでそういうことが起きると。

「モデル生物は楽しかったんですが、それだけじゃなくて、やっぱり野生のものも見たいっていうのが常にあって、大学院が京大らしく何をやっても文句を言われないとこだったんで、時々、週末とか山に行って、シロイヌナズナに似た生物をとってきて、それで種間交配してみるっていう実験を始めてました。実はその時出会ったのがミヤマハタザオだったんです。スイス・ウルナーボーデン村の新種植物に出会う前に、倍数体種分化による進化の例にそこで出会っていたと」

 ミヤマハタザオは、2つの親植物よりも、広い地域に分布することに成功した「子」だ。清水さんは、その後、倍数体のゲノム解析を可能にする技術を開発して、ミヤマハタザオがどのように環境に適応するのか遺伝子発現のレベルで解明しようとしている。また、日本各地はもちろんサハリンやカムチャツカでのフィールドワークを行って、ミヤマハタザオとその祖先種をめぐる系の研究を深めている。

ゲノミクスセンター。(写真クリックで拡大)

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