3倍体だけでなく6倍体があることは以前から知られていたが、それが、単純に3倍体が倍数化したのではなく、新たな別の親植物Cとでもいうべきものの染色体が混ざっていたこと。さらにさらに5倍体もあることなど。すべて新種であるわけだが、これらが今後、種分化イベントの中でどのようになっていくのかもよく分からない。

 さらに、興味深いのは、倍数化が起きてできた新しい植物が、いかに遺伝子をコントロールして、特定の形質を発現させたり、発現させなかったりするかだ。だいたい、染色体の数がいきなり増えて、それがまともに働くということ自体、不思議ではないだろうか。

シロイヌナズナ(学名:Arabidopsis thaliana)(写真クリックで拡大)

「違う染色体がいきなり一緒になっても、カオスになってグチャグチャになるんじゃないか、不安定になるんじゃないかってことは6倍体パンコムギなどの研究から言われてきました。それについて、我々は、タネツケバナ属の話よりも前から、シロイヌナズナ属という別の植物の研究でやってきてまして。最近分かったのは、倍数化する場合って両親とも結構似てるのがくっついているわけで、遺伝子の99パーセントは同じで、今まで通り制御されるんです。でも、残りの1パーセントが違っていて、それが大事な部分で、環境によって片方の親由来の形質とか、もう片方の形質とかを出したりするようだと。これ2014年に論文を出したばかりの最近の成果です」

 ウルナーボーデン村の新種植物でいえば、親植物が共通に持っている遺伝子を使って基本的なことはやりつつ、水が多い環境なら親植物Aの、乾燥してきたら親植物Bから受け継いだものを発現してより広い領域で成長できるというふうな調節が可能だということだ。

「さっき言いましたシロイヌナズナ属で見たというのは、ミヤマハタザオという倍数性植物のことです。これも自然界で倍数化して、定着したものです。もとはシロイヌナズナとは別のグループに分類されていたんですけど、自分が大学院生の時に、シロイヌナズナと交雑するのを見つけて、あ、これは分類が違うんじゃないかと気づいて、分類の組み替えをしたものなので、思い入れが深いんですが──」

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