まつ毛の役割と最適な長さが最新の研究で明らかに

まつ毛の長さの“3分の1ルール”とは

2015.02.26
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目を乾燥させ、ゴミを目の表面に付着させる空気の流れをまつ毛が反らしていることがわかった。(Photograph by Joel Sartore, National Geographic)

 色目を使うときに長いまつ毛は確かに有効だ。しかし、繊細なまつ毛のもっと重要な役割は、目を保護し、水分を維持することである。

 最新の研究により、目の保護に最適なまつ毛の長さが明らかになり、その黄金比のまつ毛を持つ動物も何種か見つかった。この研究は、まつ毛の空気力学に関するこれまでで最も綿密な研究とみられる。

 2月24日付けで「Journal of the Royal Society Interface」誌に掲載された論文によると、適切な長さのまつ毛は目からの水分蒸発量を最大で50%カットできるという。また、まつ毛は空中に浮遊する細かい粉塵の量を半減させ、細菌やその他の病原菌が眼球の表面に付着するのを防ぐ。

 論文の共著者でジョージア工科大学の生物学者、デビッド・フー氏は、この結果はまつ毛のない人々が目の炎症を起こしやすい理由の説明になるのではないかと考えている。

「長いまつ毛は魅力的ですが、それだけではありません。まつ毛は私達を多くの病気から守っているのです」と同氏は述べる。

 まつ毛の機能は大きく注目される研究テーマではないが、フー氏は最初の子どもが生まれて以来、まつ毛に大いに関心を持っているという。娘の美しいまつ毛を眺めているうちに、ヒトにはなぜまつ毛があるのか、他にどんな生き物がまつ毛を持っているかについて考えるようになった。まつ毛に関する研究は少なく、まつ毛が埃をつかまえる力を実験で確認した研究者がいなかったことから、同氏は学生をニューヨークのアメリカ自然史博物館へ送り、そこで動物の毛皮についているまつ毛の長さを測定させた。

 この測定結果から、興味深い法則が明らかになった。パイナップルほどの大きさのアムールハリネズミから巨大なキリンに至るまで、まつ毛のある22種の哺乳類において、まつ毛の長さは目の幅のおよそ1/3だった。ホモ・サピエンスのまつ毛は測定していないが、他の研究で報告されているデータから推測すると、ヒトの目にもこの1/3ルールが当てはまるという。

なぜ3分の1なのか

 黄金比がなぜ1/3なのかを突き止めるため、研究チームは水の入った小さな皿を目に見立て、プラスチックのまつ毛で周りを囲った。デスクトップコンピューターから取り出した小型のファンを使ってこの人工の目の上へ風を送り、目から蒸発する水の量と目の表面に付着する微粒子の数を細かく測定して一覧表にした。

 この結果から、まつ毛の長さの黄金比が明らかになった。水分の蒸発量も目の表面に付着する微細な汚染物質の数も、まつ毛の長さが目の幅の1/3のときに最も少なかった。

ラクダには目を乾燥した空気から守るまつ毛と半透明なまぶたがあり、砂嵐の中で威力を発揮する。(Photograph by Craig Lovell, Corbis)

 研究チームがコンピューターでシミュレーションを行ったところ、短いまつ毛にも目の表面から空気の流れをそらす効果があることがわかった。長いまつ毛のほうが空気の流れをより効果的に導くものの、限度があった。実際には、目の幅の1/3よりも長いまつ毛は目の方向へより多くの空気を送り込んでいた。

 今回の論文の共著者でジョージア工科大学大学院の学生であるギレルモ・アマドール氏は、「まつ毛は長い方が良いのだろうと思っていましたが、自然は目の保護のための黄金比を生み出したようです。1/3より長くてもあまり利益はありません」と述べた。

 涙膜を研究しているデラウェア大学の数学者、リチャード・ブラウン氏は、今回得られたデータはまつ毛の役割に関する理論の強い裏付けとなると述べている。まつ毛を模倣した繊維を使ってソーラーパネルなどの大きな物体から埃を遠ざけることができるのではないかという著者らの見解にブラウン氏も同意する。ソーラーパネルが光を効率良く吸収するためには、表面への埃の付着を防ぐことが必要だ。

 バージニア工科大学でバイオメカニクスを研究しているジェイク・ソチャ氏は、今回の発見は小型で動きの遅い動物についてはとても説得力があるが、大型で動きの速い動物については空気の流れが異なることが考慮されていないと指摘している。アマドール氏もこれを否定していない。

「この新しい考えは興味深いもので、エビデンスもたくさんあります。これからより多くのことが解明されるでしょう」とソチャ氏は述べた。

文=Traci Watson/訳=キーツマン智香

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