- MARCH 2015 -

華やぐ街へ向かって

 手こぎの平底船は1隻で何トンもの荷物を運べる――そう紹介しているのは、ナショナル ジオグラフィック英語版(1938年5月号)のシンガポール特集。この写真は、当時の水上交通の拠点だったクリフォード桟橋からの光景で、港を行き交う平底船が写っている。「黒々とした水が流れるシンガポール川をさかのぼり、船が大群をなして、近代的な大都市の中心部へと向かっていく。蒸気機関の時代になっても、平底船は以前と変わることなく川を往来している」


 港の向こうに立っているのは、会員制クラブがあったフラトン・ビルで、上流階級の社交場となっていた場所だ(現在は、高級ホテルに改装されている)。ルーペでのぞいてみると、思いがけないものが見つかった。船乗りが岸壁をよじ登っているではないか。上までたどり着いたら、最先端の店が立ち並ぶ華やかな街に繰り出すつもりなのかもしれない。

――マーガレット・G・ザコウィッツ

写真=MAYNARD OWEN WILLIAMS, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE