第5回 風の谷の湖

岩の熱によって不思議な形に解けた湖氷に入り、思わずはしゃぐ私。(Photograph by Dale T. Andersen)

 ちなみにデイルの靴のサイズは33cm。「えぇっ・・・33cm?! そんな靴って普通に売ってるの?!」と初めは思ったが、我がチームメンバーの一人であるブラジミルの靴のサイズも全く同じ33cm。おかげで、愛すべきオトボケもののブラジミルは、デイルの防寒靴をよく履き間違えて、デイルが「ブラジミル! こらーっ」と叫ぶシーンを度々目にしていた。
 さらに補足だが、ブラジミルは身長186cm、体重98kg(自称)、デイルと似たようなサイズ感だが、デイルと違って結構お腹が出ているせいで、“お腹の中には双子がいる”とからかうのが我々のなかで定番となっている。言い出しっぺは私らしいが。

貫通

 ドリルビットは5つ目に突入し、しばらく掘ったところで穴から水が吹き出してきた。湖氷を掘りぬくことができたのだ。厚さは4m15cm! 南極は夏だというのに。

 私がよく知っている昭和基地周辺では、夏になると氷が解けてなくなる湖がほとんど。ここの湖氷は4mと事前に聞いてはいたけれど、実際に自分で穴を開けてみると、その厚さが初めて実感できた。

 半日かけてアンターセー湖に直径25cm × 厚さ4m15cmの穴を開けたのち、そこの水深を測定した。先端におもりをつけたメジャーをスルスルと水の中に降ろしていく。途中まで見えていたおもりはゆっくりと水の青色に溶け込み、消えていった。私はこの、水の中に静かに機材が消えていくのを見るのがとても好きだ。いつも、なんだか憧れと羨望のような気持ちで、機材が吸い込まれていく瞬間をじっと見つめている。

 おもりを降ろすこと5分、持っていたメジャーがふわっと軽くなる瞬間が訪れた。おもりが湖底に到達したのだ。メジャーのメモリを見ると、水深100mを示していた。

 その日の午後、湖の違うポイントへもう一つの穴を開けにいった。午前のポイントよりも氷が少し薄かったが、途中から水っぽいシャーベット状の氷になったので、もっと時間がかかった。穴を開け終えて水深を測定すると、こちらはなんと深さ160m! この透明な水がここから下に160mも続いているのだ。

正面の山頂にある氷河から常に吹き下ろしてくる強風によって、湖面には大きな岩がゴロゴロと落ちている。