ホタル、クラゲ、イカ、キノコ…さまざまな生物が光を放つ。その光には、身を隠す、獲物をおびき寄せる、交尾相手を誘うといった役割がある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

光る生き物の世界

ホタル、クラゲ、イカ、キノコ…さまざまな生物が光を放つ。その光には、身を隠す、獲物をおびき寄せる、交尾相手を誘うといった役割がある。

文=オリビア・ジャドソン/写真=デビッド・リトシュワガー

 生物が光を放つ現象を総称して「生物発光」という。そのかすかな光は魔法のように美しいが、実はごくありふれた現象だ。
 陸上では、夏の夜に飛び交いながら光を放ち、交尾の相手を引きつけるホタルがおなじみだ。ほかにも、ツチボタルと呼ばれる地中で光る幼虫や、カタツムリ、ヤスデ、キノコなど、発光する陸生生物にはさまざまな種類がある。

光る生き物の8割は海に生息

 だが、もっと本格的な光のショーが繰り広げられる舞台は、海の中だ。海中を漂う小さなウミホタルが放つ光は、陸のホタルと同様に求愛のメッセージ。ヤコウチュウや渦鞭毛藻など、海中を漂う発光プランクトンもいて、周囲の水が揺れ動くと光る。夜の海で泳いでいると水中に光る粒が見えたり、ボートの航跡がかすかに光って見えたりするのは、たいていこうした生き物のせいだ。

 光る魚やイカ、クラゲ、エビ、ナマコも知られている。毒のある触手をカーテンのように垂らして獲物を捕まえるクダクラゲにも、光るものがいる。光を放つ細菌や原生生物もいる。既知の発光生物の8割以上は、海に生息しているという。

 私はプエルトリコのビエケス島を訪れた。この小さな島は、海水が揺れると光る小さな生物、渦鞭毛藻が無数に生息する入り江「バイオ・ベイ」で名高い。

 夜は闇に包まれていた。月の出にはまだ早く、街灯も数少ない島の夜空には、満天の星がまたたいていた。バイオ・ベイで生物発光を体感するツアーに参加した私は、船底が透明なカヌーに乗っていた。入り江ではその夜、同じようなツアーがいくつか催されていた。私たちのグループは8隻のカヌーに2人ずつ分乗した。

 入り江の中ほどでカヌーを漕ぐ手を休め、暗い海と星空を眺めながら、ガイドの話に耳を傾けた。夜の闇がまだ保たれていると感じたこの島でも、観光客の急増と、新たな建物や道路ができたことによる光害が問題になりつつあるという。街灯の数はまだそれほど多くないが、それでも影響は見てとれた。島の人工光から遠い入り江の縁は際立って暗く、渦鞭毛藻の放つ光がはっきりと輝いて見えた。ガイドが説明を続ける間にも、1匹の魚が素早く海中を泳いでいき、流星のように光が流れた。

 しばらくして、再び移動を開始した。ほかのカヌーは先へ進んだが、私の乗ったカヌーは少し出遅れ、暗い海に取り残されたような錯覚に襲われた。パドルを漕ぐと、前進するカヌーの動きに渦鞭毛藻が反応して発光し、一筋の明るい光が伸びていく。カヌーの透明な船底からその光を眺めていると、海と空が一つになり、自分が星々の間をカヌーで進んでいるかのような、不思議な感覚に包まれた。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年3月号でどうぞ。

編集者から

 夏の風物詩ホタルを筆頭に、富山名産のホタルイカや、東京湾アクアラインのパーキングエリアの愛称にもなったウミホタル、ロマンチックな夜光虫など、日本人にとって光る生き物は昔も今も身近な存在です。
 なかでも近年の注目株は、2008年のノーベル化学賞に輝いた下村脩博士の研究対象だったことで一躍有名になった「オワンクラゲ」。ほかにも日本ではさまざまな形で生物発光の研究が進行中です。今月の日本版では、そんな国内の研究現場から、光るカイコのまゆも紹介しています。オワンクラゲやサンゴの蛍光タンパク質の遺伝子を組み込んで生まれたという、さまざまな色あいの光をお楽しみください。(編集H.I)

この号の目次へ

ナショジオクイズ

こちらは90年代に建てられた、あるテーマパークの写真です。さてどこでしょう?

  • 富士ザウス王国
  • 富士ワイルドブルー王国
  • 富士ガリバー王国

答えを見る

ナショジオとつながる

会員向け記事をお読みいただけます。

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー

ナショナルジオグラフィック日本版サイト

広告をスキップ