もうひとつは、ものすごく偉ぶっている人たちもいるけれど、私が出会った先住民族のおばちゃんたちもヒンディーの村人も、何ともいえず温かい。そういうところではないでしょうか。

 ブバネシュワールで、一般的なインド人のお宅におじゃましたときのことです。その家のお母さんが、ヨーグルトとナッツを混ぜたおやつを出してくれたんですね。

 お腹を壊すから、絶対に現地のものは食べるなと言われていたので遠慮していたら、そのお母さん、それを指ですくって私の口の中に押し込んでくるんですよ。「かわいそうに、そんなに痩せちゃって。これ食べなさい」といって。おいしかったですし、情の濃さのようなものに心を打たれます。お腹なんか壊しませんでしたよ。

 インドでそういう場面に行き会ったら、若い子たちはめろめろでしょうね、きっと。

(おわり)

篠田節子(しのだ せつこ)

1955年、東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン―神の座―』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞を受賞。著書に『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』『銀婚式』『長女たち』など多数。昨年12月、作家生活25周年記念作品として、インドを舞台にしたビジネス冒険大作『インドクリスタル』を発表。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。

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