意識の片隅でベルが鳴っているのは分かる。腹立たしい。バシッと叩いて止める。また鳴る。叩く。何度か繰り返すうちに「そろそろマズイ」と状況認識ができるようになる。なんとか上半身を起こすが、そのまま反対方向に倒れ込む。体が重い……ここは木星か? 重力に抵抗してようやくベッドの重力圏から離脱するのは目覚めてから10分以上も後のこと。

(イラスト:三島由美子)(画像クリックで拡大)

 10分なんて甘い! 私は30分かかる、いや俺は1時間、など各所から悲鳴が聞こえてきそうだが、毎朝泥から這い出るように苦労してベッドから抜け出している人は数多い。単なる睡眠不足のためではない。同じような睡眠時間でもすっきり目覚める日とそうでない日があることに気づいている人も多いだろう。どのようなメカニズムで寝起きの感覚は決まっているのだろうか。

 目覚ましなどで無理矢理起こされたときに多いのだが、覚醒直後に眠気や気怠さが強く残り、頭はぼんやりして、疲労回復感がないことがある。睡眠科学の世界では、このような睡眠から覚醒状態に切り替えができない一過性のぼんやり状態を睡眠慣性(sleep inertia)とか睡眠酩酊(sleep drunkenness)と呼ぶ。今回はこの睡眠慣性について少し深掘りしてみたい。

 睡眠慣性があると思考がうまく働かず、刺激に対する反応速度も低下するため危険業務は厳禁である。運転中に眠気を感じてパーキングエリアで仮眠をとり、目覚めた後に運転を再開したのはよいが睡眠慣性のために逆に事故を起こしてしまったなどといった笑えない話もある。

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