その言葉を聞いて母親を思い出した。たまに帰ると大皿に盛られて出てくる鶏の唐揚げ。大好物ではあるのだが私もアラフォー、昔ほどは食べられない。しかし、お腹いっぱいだといっても母は次々に揚げる。もったいないと思っていたが、ひどく体調を崩したときに「ちゃんと食べなさい」と書かれた手紙が届いて、いっぱい食べさせることが“おふくろの思い”だということに気づいた。農業従事者の食事だったバンデハ・パイサがコロンビア全土に広まったのは、子どもにたくさん食べて欲しいと願う母親の思いを体現する料理だったからかもしれない。

「実はコロンビアのホテル協会は、料理名をバンデハ・モンタニエラに変えてしまったんですよ」と明さんが言った。これだけよく食べられているのだから、国を代表する料理としてアピールしていこうと国に申請したのだという。「パイサだと田舎くさいから、イメージアップのために“山”を意味するモンタニエラに変えたようです」

「そんなの誰もピンとこないわよ。やっぱりバンデハ・パイサでなくっちゃ」とステラさんは言う。私もそう思うなあ。コロンビアの農民たちを支えるために生まれ広がった料理であることを忘れないためにも。

ステラさん(左)と明さん。ステラさんはボゴタ出身だが、ベネズエラに住んでいたときに日本人のご主人と知り合ったという。明さんは10歳までコロンビアで過ごした
プント プンタの営業は17時~。いまはバンデハ・パイサのほかにも、3種類のジャガイモを使ったボゴタの名物スープ・アヒアコやトウモロコシの粉でつくる薄いパン・アレパなどが食べられる

PUNTO PUNTA(プント プンタ)
東京都渋谷区恵比寿南2-13-14 茶屋坂T&Kビル1F
電話:03-5704-6280
ホームページ:http://puntopunta.jigsy.com/

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮

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