ピンクウミウシの大移動は地球温暖化のサイン?

海水温上昇が原因? 米国西岸を集団で北上するピンクのウミウシ

2015.02.13
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ピンク色のウミウシ(学名:Okenia rosacea)がカリフォルニア沿岸を北へ移動していることがわかった。(Photograph by Gary McDonald)

 バラの花びらのように色鮮やかなウミウシがカリフォルニア沿岸中部と北部に押し寄せている。だが、このことを喜ぶ専門家はまずいない。なぜなら、本来、南カリフォルニア沖の温暖な海域を好むウミウシが北部に現れたことは、地球の温暖化が海洋生態系にも深刻な影響を与えているとも考えられるからだ。

 体長2.5センチほどのピンク色をした「ホプキンスローズウミウシ」(Okenia rosacea)がサンフランシスコ以北に姿を見せることはほとんどなかった(このウミウシの鮮やかなバラ色は、群体をつくるピンク色のコケムシを採餌することによるもの)。以前に沿岸北部でこのウミウシの大群が見られたのは16年以上前のこと。当時「エルニーニョ」として知られる気象現象が豪雨と海水温の上昇をもたらしたときだった。

 現在、エルニーニョは発生していないため、専門家たちは地球規模の気候変動によって温められた海水がウミウシの現れた原因だとみている。

 ウミウシの大群の移動そのものは、カリフォルニア北部の生態系に害を及ぼすことはないだろう。ただ、海水温の上昇が原因とすれば、ウミウシ以外にもそれに海洋生物が反応して生息地を移動し始めているとも言える。そしてその規模は、海洋環境を揺るがしかねないほど大きいかもしれないのだ。

「ピンクのウミウシを見ないことは何年もありました。いたとしても、ほんの1、2匹というところでした」。米サンフランシスコにあるカリフォルニア科学アカデミーの無脊椎動物担当の飼育員、テリー・ゴスリナーは話す。

海水温とウミウシ北上の関係

 ただこの数カ月はかつてと違う。ゴスリナーの同僚たちもカリフォルニア沿岸の至る所で何百という強烈なピンク色のウミウシが潮溜まりに集まるのを目撃した。「10メートル近く離れたところからでも、すぐにわかりますよ」。ゴリスナーは続ける「1月の調査では、一つの潮溜まりで64匹のウミウシが目撃されました。とてつもない数です」

 16年ぶりでピンク色のウミウシが見られるようになったこと自体は驚くべきことではない。数十年前から沿岸域でウミウシを調査してきたゴスリナーらは、既に2011年に「エルニーニョが起こればウミウシの個体数がまた急増する」との予想を論文で発表していたからだ。

 今回注目すべきなのは、繰り返しになるが、エルニーニョが起きていないのに、ピンクのウミウシの集団北上が見られた点だ。これは想定外のことだ。

 観測記録が残る1919年来のカリフォルニア州モントレー郡北部の海面温度の推移を見ると、海が徐々に暖かくなっていることがわかる。米国海洋大気庁によれば、現在のカリフォルニア北部の海水温は長期平均を1.6~2.7℃上回っているという。

海洋の変化を教える

 カリフォルニア大学サンタクルーズ校で海洋生態学を教えたジョン・ピアース元教授は、海水温の上昇は2013年後半以降のヒトデの大量死と関係すると考えている。専門家らは大量死を引き起こしたウイルスを2014年に特定し、異常な数のヒトデが海水の暖かい地域に集まったこともウイルスが増殖する一因となったとの見解もある。

「海洋気候はかなりの速さで変わっています」とピアースは指摘するが、「ただ、大気中の二酸化炭素の増加による海洋気候の変化と、別の要因で起こる変化を区別するのは難しいでことです」と述べる。「学者仲間は『確かに我々はたくさんの計測器を使える。でも生物は常に自分たちの周りの変化を感じ取っている』とよく言います。海洋環境の変化を知るセンサーの一つとして、ウミウシをもっと調べるべきかもしれません」


カリフォルニア北部の潮溜まりに集まったピンク色のウミウシ。 (Photograph by Jeff Goddard)

文=Esther Landhuis/訳=桜木晴子

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