水族館のシャチが米国で絶滅危惧種に

「捕獲された動物だからといって法と別枠の扱いにはできない」

2015.02.10
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米国の種の保存法で絶滅危惧種と指定されたサザンレジデントシャチのロリータ。1970年から米国マイアミ海洋水族館で飼育されている。(Photograph by Andrew Innerarity, Reuters/Corbis)

 2月4日、米マイアミ水族館で飼育されているサザンレジデントシャチ「ロリータ」が、政府が指定する絶滅危惧種として指定された。ここ数年、動物保護活動家らが、ロリータをマイアミ海洋水族館から解放しようと運動を展開しているが、今回の政府の判断でロリータがすぐに野生に戻るわけではない。

 動物愛護団体によるコンソーシアムが2013年に提出した請願を受け、米国海洋大気庁(NOAA)海洋漁業局は4日、「捕獲された動物だからといって法と別枠の扱いにはできない」とした。こうして、ロリータは、2005年に既に絶滅危惧種に指定されているサザンレジデントシャチとして認定されたことになる。

 現在、米国内で飼育されているシャチの中で、「種の保存法」に該当するのはロリータだけ。「飼育されているほかのシャチは別の種で、同様の指定を受けるシャチはいない」とNOAA海洋漁業局のマイケル・ミルスタインは言う。

 ミルスタインによると、「法では、捕獲された動物の飼育を禁じていない」ため、4日にロリータが絶滅危惧種と指定されたことで何か特別のことが起きるわけではない。むしろ、長年飼育されたロリータを野生に戻せば、ほかの野生動物が襲われたり、ロリータ自身が病気になったりするなど、リスクが生まれると述べる。「懸念しているのは、飼育されていたロリータ自身と野生クジラ、双方の安全です」

ユニークなシャチ

 ワシントン州ピュージェット湾で捕獲されたロリータは、1970年からマイアミ海洋水族館で飼育されている。NOAAは、遺伝子検査と身体的特徴から、ロリータがサザンレジデントシャチの個体であることを確認。サザンレジデントシャチは、1年の大半をワシントン州やカナダのブリティッシュコロンビア州の内水で過ごす。サザンレジデントシャチが絶滅のおそれのある種として、米国の「種の保存法」に指定されたのは2005年。現在、その数はわずか80頭前後と考えられている。

 NOAA海洋漁業局は、1万7000件のパブリックコメントを受け、ロリータを「種の保存法」の対象とした。ミルスタインによれば、市民からの意見のほとんどが、ロリータを絶滅危惧種として認定することに肯定的なものだったという。

 米国政府が飼育動物を「種の保存法」の対象に指定した例は、これが初めてではない。過去にチョウザメが指定され、現在はチンパンジーを指定種とする検討が始まっている。

今後法廷闘争に発展する可能性も

 動物保護活動家らは、今回の政府の決定がロリータを野生に戻すことにつながることを望んでいる。

 非営利団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会」(PETA)は4日、「これでロリータは、ほかへの譲渡、過剰な商利用が制限されることになる。私たちはロリータの保護が確実に執行され、ロリータを野生へと戻すよう働きかけていく」とブログに記している。

 この問題に詳しい政府関係者によれば、PETAは、「種の保存法」に照らし合わせて、絶滅危惧種への禁じた判例をもとに、ロリータ解放の訴訟を起こす可能性もあるという(この件に関して、2月4日にPETAへのコメントを求めたが、回答は得られなかった)。

 4日の決定は、PETA FoundationとAnimal Legal Defense Fund、Orca Networkの請願に対して下されたものである。マイアミ海洋水族館にも見解を求めたが、回答は得られていない。

文=Brian Clark Howard/訳=堀込泰三

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