第8回 神子元島のシュモクザメの調査は大成功

 日本でシュモクザメの集団が見られる有名なダイビングスポットが、神子元島の他にもう1カ所ある。それは沖縄は石垣島のさらに西、台湾を指呼の間に臨む日本最西端の島、与那国島だ。与那国島には神子元島と同様、シュモクザメを見せるためのダイビングショップがいくつかあって、私はまだ行ったことがないけれど、全国のサメファン、ダイビングファンが集まってくるらしい。

 興味深いことに、神子元島と与那国島とでは、シュモクザメが一番よく見られるピークのシーズンが真逆である。神子元島では夏(7~9月)がベストシーズンなのに対し、与那国島では冬(1~3月)に多くのシュモクザメが見られる。

 これは1つの可能性を暗示している。

 そう、神子元島で見られるシュモクザメと、与那国島で見られるシュモクザメは、同一の集団である可能性がある。つまり夏の間、神子元島に滞在したシュモクザメは、冬の到来とともに南下し、暖かい与那国島で冬を越した後、また翌年の夏に神子元島に戻るのかもしれない。

 なるほど神子元島と与那国島は、同じ日本国内といえど、千里の隔たりがある。試しにグーグルアースを使って距離を測定してみると、直線距離にして1900キロも離れている。けれども私はかつて、海洋生物の回遊距離を比較したことがあり(連載第3回の図2)、その経験からすると、1900キロという距離はシュモクザメにとって不可能な距離とはまるで思えない。

 というわけで、6カ月後の2016年2月末に位置情報が送られてくるのが、今から待ち遠しくてしょうがない。もしもその位置が与那国島の周辺だったら――私は狂喜乱舞するだろうなあ。

調査チーム集合。右から2番目が筆者。右端は「神子元ハンマーズ」の渋谷顕男さん。(写真提供:Tre' Packard)
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つづく

渡辺 佑基(わたなべ・ゆうき)

1978年、岐阜県生まれ。国立極地研究所生物圏研究グループ助教。農学博士。バイオロギングを用いて主に海洋動物の生態を研究している。2010年には南極観測隊に参加し、ペンギンに取り付けたカメラでの撮影に成功。研究論文が米国科学アカデミー紀要に掲載された。2011年、学術分野全般で優れた実績を積み上げた人に贈られる山崎賞を受賞。2014年、『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』(河出ブックス)で第68回毎日出版文化賞の自然科学部門を受賞。