第8回 神子元島のシュモクザメの調査は大成功

南伊豆の美しい海。(写真提供:Tre' Packard)
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 前回お話ししたように、今回の調査の目的は神子元島周辺に群れるシュモクザメの生態を調べることだ。シュモクザメの大集団は世界中のダイバーの憧れの的であるが、神子元島のように、都市部から容易にアクセスできる場所で見られる例は極めて珍しい。というのも、シュモクザメの見られるダイビングスポットといえば、ガラパゴス諸島(エクアドル)やココ島(コスタリカ)など、大陸から遠く離れた孤島にあるのが当たり前だからだ。

 これには伊豆半島の特異な地理的条件が関係している。地図をご覧になるとおわかりのように、伊豆半島は広大な太平洋の西端に、まるで杭を打ち込んだみたいに鋭く突き刺さっている。そのうえこの海域は、黒潮(英語でもKuroshioと呼ばれる)という世界有数の強烈な暖流が、まるで目に見えない大河のように、南から北へと滔々と流れている。つまり伊豆半島南端の海は、海洋学的にほとんど外洋であり、沿岸部には寄りつかない外洋性の様々な海洋生物(シュモクザメもそうだ)が、黒潮にのってやってくるというわけだ。

調査を手伝ってくれた「神子元ハンマーズ」の猪瀬孔明さん。海の似合うダンディな男! 背景は神子元島の灯台。(写真提供:Tre' Packard)
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 しかし神子元島でわかっているのは、シュモクザメの集団が毎年7月頃にやってきて、11月頃にはどこかへ去っていくということ。それ以外の移動や回遊のパターンはまるきりわかっておらず、それを明らかにするのが私たちの目標だ。

 私たちは「音丸」という素敵な名前の付いた漁船を1週間チャーターし、船長の石坂さんの操船のもと、毎日朝から晩まで調査を行った。船には現地のダイビングショップ「神子元ハンマーズ」のスタッフの方が乗船してくれ、シュモクザメの出現スポットについてアドバイスをしてくれた。

 調査の内容は、海底へ受信器を設置することと、サメへ発信器を装着することである。受信器はサメの出現率が高く、水深が20メートル程度である場所を選んでスキューバダイビングで潜り、海底の岩場の隙間にロープを通して設置した。

 いっぽう発信器はフリーダイビング(タンクを背負わない、いわゆる素潜り)で潜り、サメにそーっと近づいて、近距離からスピアガンで打ち込んだ。あえてスキューバを使わないのは、フリーダイビングのほうが音が静かなのでサメに近寄りやすく、また身軽なのでサメを追いかけやすいためだ。

神子元島を背景に水面で記念撮影。真ん中が筆者。(写真提供:Tre' Packard)
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