第13回 ガラパゴスでのシュモクザメ調査

 私たちはその日のうちに調査船に乗りこんだ。これから片道35時間かけて、調査地であるダーウィン島まで移動する。慌ただしく物資の積み込みが始まり、船員が甲板の柱に、青々とした大きなバナナの束をくくりつけた。なるほど、こうしておけば航海の最中にだんだん熟れてきて、食べごろになるのだろう。やがて船は碇を上げてロープを解き、1週間の航海に出発した。

 船は小さく、よくいえば簡素で倹約的、より率直にいえばショボかった。シャワーはおろか水道すらなく、トイレの後は自分でバケツで海水をすくって流すようになっていた。船室といえるのは、三段ベッドがみっしり並んだ一部屋のみで、座ってくつろげるスペースは皆無。そのため航海中は、甲板に出て波風にさらされるか、あるいは狭いベッドに潜り込んでじっとしているか、という二択しかなかった。あまつさえ毛布がなく、夜になると体が冷えた。私は念のために持ってきていた長袖のTシャツを体にかけ、寝るでもなく起きるでもなくとろとろとしながら、長い35時間をなんとかやり過ごした。

船上の食事。バナナがつぶして揚げてある。うまい!(撮影:渡辺佑基)
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 ダーウィン島に到着し、甲板に出ると、目の前には凱旋門がそびえ立っていた。ダーウィン・アーチと名付けられた、奇跡のような天然の凱旋門。その足元には波が当たって白く砕け、上空にはグンカンドリのおびただしい群れが、人間たちを睥睨(へいげい)するかのようにゆっくりと舞っていた。海の中はシュモクザメのスポットになっており、サメが大群をなしてゆらゆらと泳いでいるという。すごいところに来てしまった、と私は思った。

ど迫力の天然の「凱旋門」。ダーウィン・アーチと呼ばれ、その周辺は世界でも有数のダイビングスポットである。(撮影:渡辺佑基)
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 翌朝、早速調査を開始した。サメを捕獲するために、数十もの釣針に餌をつけて次々と海に落としていく。延縄(英語ではロング・ライン)と呼ばれる世界共通の漁法だ。

 よほど魚影が濃いのだろう。体長1メートル強のアカシュモクザメの幼魚が、次々と針にかかって上がってきた。どれも生きがよく、手でつかむとばたばたと暴れる。私たちはそのうちの2匹に、日本から持ってきた記録計(深度や遊泳スピードなどを記録する)とビデオカメラを取り付け、放流した。

シュモクザメだけでなく、大きなキハダも釣れた。(撮影:渡辺佑基)
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