第7回 世界が注目!神子元島のシュモクザメ

 今回の私たちの調査の目的は、バイオロギングによってシュモクザメの移動パターンを調べることだ。このサメはじつに自由気まま、神出鬼没であり、毎日のように潜っているダイビングショップの人たちでさえ、どのタイミングで神子元島周辺のどのポイントにサメが現れるかは、ほとんど予想できないと言う。いわんや夏のシーズンの始まる前にシュモクザメの集団がどこにいて、シーズンの終わった後にどこに去っていくのかはまるきりわからない。

 そこで私たちの調査計画はこうである。まず、最初の数日間はスキューバダイビングで潜り、神子元島の周辺の海底10カ所ほどに受信器を設置する。その後、より身軽で小回りの利くフリーダイビングで潜り、シュモクザメにえいやと発信器を取り付ける。サメに取り付けられた発信器は、一定の間隔で超音波の信号を発信し続けるので、そのサメが受信器のそばを通り過ぎた瞬間、「ただいまサメ通過」の記録が受信器に残る。

 受信器は1年間設置したままにし、来年の夏に回収する。回収した受信器に記録されているデータを分析すれば、シュモクザメが神子元島の周辺をいつ、どのように動き回っていたのかがわかる。時間帯によって、潮汐によって、あるいは水温によってどう行動を変化させていたのかがわかるはずである。

(写真提供:神子元ハンマーズ)
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 それに加えて今回の調査では、人工衛星への発信器もシュモクザメに取り付ける予定だ。これは半年間ほどサメの体にくっついてデータを蓄積した後、自動的に切り離されて海面に浮かび、人工衛星へデータを送信する機器である。インターネットを経由して受け取るデータからは、サメの長期間にわたる潜水パターンだけでなく、大まかな居場所の変化もわかる。だからシーズンの終わりに神子元島を去ったサメが、どんなルートでどこに向かったのかが突き止められるはずである。

 これらの情報は科学的な価値が高いのみならず、シュモクザメを観光資源としているダイビングショップの人たちにとってもすこぶる有益だろうと思う。今回の調査では「神子元ハンマーズ」を始めとするダイビングショップの人たちに全面的にお世話になっているから、そのような形で還元することができたら、私としてもとてもうれしい。

 問題はよい海況が続いてくれるかどうか、そして神出鬼没のシュモクザメに首尾よく発信器を取り付けられるかどうかだ。やってみないとわからないけれど、私たちは大好きなサメの生態を明らかにするために、どこまでも突っ走るつもりでいる。

 さあ、サメの夏、神子元の夏がもうすぐ始まる。

つづく

渡辺 佑基(わたなべ・ゆうき)

1978年、岐阜県生まれ。国立極地研究所生物圏研究グループ助教。農学博士。バイオロギングを用いて主に海洋動物の生態を研究している。2010年には南極観測隊に参加し、ペンギンに取り付けたカメラでの撮影に成功。研究論文が米国科学アカデミー紀要に掲載された。2011年、学術分野全般で優れた実績を積み上げた人に贈られる山崎賞を受賞。2014年、『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』(河出ブックス)で第68回毎日出版文化賞の自然科学部門を受賞。