このことに気付いた時、私は失敗のデータだと思った。サメが横倒しの状態で泳ぐなど、しかも寝返りを打つみたいに方向をときどき切り替えるなど、聞いたことがない。このサメは釣られた影響でひどく体が弱っており、異常な動きを見せたのだと思った。

 でも考えてみれば、このサメは、放流してから記録計が切り離されるまでの18時間の間に、20キロほど移動したことがわかっている。弱ってふらふらの魚がそれほどの距離を泳ぎ切るとは考えられない。

 さらにこのサメは呆れたことに、記録計が回収された後、もう一度我々の仕掛けにかかり、釣り上げられている。ということは20キロの距離をまた泳ぎ戻ってきて、元気にエサを追いかけ続けていたということである。

 だから私は差し当たり、横倒しの遊泳姿勢はヒラシュモクザメにとっての自然な行動であると、素直に受け入れてみることにした。そして、だとすればそれが何を意味するのか、どうしてそんな奇妙な姿勢をとる必要があるのか、真剣に考えてみた。

 その結果、奇想天外としか言いようがない、とびきりの仮説を思いついた。

 ヒラシュモクザメの外見で際立っているのは巨大な背びれである。スレンダーな体には不似合いなほどに立派な背びれが、堂々と背中にそびえたっている。実際、ヒラシュモクザメの背びれは世界中に450種ほどいるサメの中でも群を抜いて大きい。アカシュモクザメやシロシュモクザメなど、他のシュモクザメ類もこれほど大きな背びれは備えていない。

 しかもヒラシュモクザメの背びれは、後ろに傾いた三角形をしており、形といい大きさといい、胸びれと瓜二つである。これが私の仮説の最大のポイントだ。

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