第3回 マグロとホホジロザメに共通する進化の秘密を発見!

 今までに大きく分けて、2つの仮説(二者択一ではなく、両立も可能な仮説)が提示されてきた。1つ目の仮説は、いわば「幅広い温度帯仮説」。高い体温を維持する魚はまわりの水温の影響を受けにくいので、幅広い温度帯に適応でき、地理的に広い範囲に生息できるというものである。この仮説はおおむね支持されており、実際、マグロ類もホホジロザメも極域を除く世界中の海に生息している。

 いま1つの仮説は、いわば「高速遊泳仮説」。高い体温をもつ魚は、速い遊泳スピードで泳ぎ続けられるというものである。高い体温といっても、魚の体内で最も温かいのは、有酸素運動を支える赤筋(いわゆる血合)の部分である。一般に、筋肉は温かければ温かいほど素早く収縮し、また高い出力を生み出せる。そのため高い体温をもつ魚が、そうでない魚に比べて尾びれをバシバシと力強く振り、速い速度を維持できるという仮説はまこと理に適っている。

 ところが、高速遊泳仮説は今までに一度も検証されてこなかった。マグロは他の魚よりも速いというイメージを多くの人は(海洋生物学者も含めて)持っているけれど、それを裏付ける科学的なデータは、じつは一度も示されていない。このことに気付いた私は、これはチャンスだと思った。マグロ類やホホジロザメが他の魚に比べて速いことを証明すれば、古くからの謎である「高い体温を保つ魚がなぜ進化したか」という問題を、一気に掘り下げることができる。

 折しも私は今まで、マンボウからチョウザメ、高い体温をもつネズミザメに至るまで、様々な魚に記録計を取り付け、遊泳スピードを測定してきた。それだけでなく、世界中の研究者が同じように魚に記録計を取り付け、結果を文献に報告していることもよく知っている。そこで一念発起、今までに測定された魚の遊泳スピードのデータを、文献の山と自分自身のハードディスクの中から集められるだけ集めてみることにした。そして体温の高い魚が本当に速く泳ぐかどうかを統計的に検討した。

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