第3回 マグロとホホジロザメに共通する進化の秘密を発見!

 魚は変温動物であり、たとえば水温20℃の池にすむコイの体温はやはり20℃であると学校では習う。これは一般的には正しいが、厳密に言えば正しくない。まわりの水温よりもはるかに高い体温を維持している、不思議な魚のグループがいるからだ。

 そんな魚のグループの1つがクロマグロ、キハダ、カツオなどのマグロ類。そしてもう1つのグループがホホジロザメ、ネズミザメ、アオザメなどのサメの一部だ。これらの魚は、まわりの水温よりも5~15℃ほど高い体温を維持している。冷たい海でマグロを釣り上げ、ビチビチ跳ね回る魚体を押さえつけて包丁を入れると、内部がほんのり温かいことを漁師は昔から知っていた。

 マグロ(硬骨魚類)とサメ(軟骨魚類)は分類学的には綱のレベルで違うから、たとえばヒトとハトほども離れた、ほとんど別の生物と言える。一般に、分類学的に別の生物が共通の体の作りを進化させることを「進化の収斂」と呼ぶ。マグロ類とホホジロザメの高い体温は、進化の収斂の際立った一例であり、進化という現象の不思議さ、奥深さを象徴している。そのため半世紀以上も前から、数多くの研究者がこれらの魚における高い体温の謎を、様々な角度から調査してきた。

 高い体温を維持するための生理学的なメカニズムは、今ではよくわかっている。マグロ類にせよホホジロザメにせよ、決して止まることなく海の中を泳ぎ続け、その筋肉の運動によって発生した熱を特殊な血管の配置によって体内に蓄えている。

 いっぽうで、いまだに謎なのは、そもそもどうしてこのような不思議な進化が起こったのかである。高い体温を保つには多くのエネルギーが必要であり、それゆえマグロ類やホホジロザメは、普通の魚よりも多くのエサを食べ続けなければ生きていけない。

 それにもかかわらず、マグロ類やホホジロザメが高い体温を保つように進化したということは、高い体温が何らかの形で、これらの魚の生存率の向上に貢献していることを意味する。ある形質が進化するためには、そこに生存上、子孫繁栄上のメリットがなければならないというのがダーウィンの進化論だ。ではマグロ類やホホジロザメにとっての、高い体温のメリットって一体何だろう。

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