第40回 ハワイの伝統料理「ラウラウ」を食べてみた
もちろん、お店は一頭丸ごとではないが、肉は細く割いて皿に盛るのが一般的だそうだ。じっくりと蒸し焼きにされた肉に余分な脂はない。バナナの葉に包んで長時間蒸し焼きにするからか、燻製のような奥深い風味。食べ物は水分量が少ない方が長持ちする。常夏の島で食べ物を保存するという意味でも、イムは理にかなったものだった。
しかし、ラウラウもカルアピッグも味付けがとてもシンプルだ。保存性を高めるという意味では香辛料を使う方法もあるが、リョウジさんに問うと「ハワイの伝統料理の多くは塩のみで味付けする」とのこと。ハワイに本格的に欧米人が訪れたのは18世紀後半。それまでこの火山島には大きな文化の流入がなかったため、調味料も限られていたのだろう。
「ハワイでは昔から塩田で塩をつくっていました。火山性の土壌なので鉄分やカルシウムなどのミネラルがとても豊富なんですよ」とリョウジさんは、ハワイアンソルトを見せてくれた。土が赤いため、塩も赤い色をしているという。なめると少し甘みを感じる、味に深みのある塩だった。シンプルな料理ながら旨みたっぷりなのは、この塩の役割も大きいようだ。
「うちは祖母の両親がハワイのマウイ島に移住したのが始まり。祖父が広島出身でハワイと日本を行き来していましたが、僕も兄弟もずっとハワイで育ちました。家は和食中心でしたが、住んでいた地域は日系のほか、フィリピン系とハワイアンも多かったので、子どもの頃からハワイアンの友達の家でラウラウなどをよく食べていました。いまは減っているようですが、学校の給食にもルアウの日があったので伝統料理はとても身近なんですよ」
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