第91回 グンタイアリはほんのり鰹だしの香り

アシナガバチを運んで狩りから帰るグンタイアリ
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 朝、目が覚めた。手の指の先にアリが這っている。別の1匹が枕元へと歩いてくるのも目に入った。我が家にすんでいるオオアリたちだ。

 ふだん明るいうちは隠れたところにいるオオアリがベッドまでやってくるとは、これはもしかして?

 そう思って部屋の中を見渡すと、案の定、グンタイアリの群れが獲物を探していた。第77回でも紹介したが、グンタイアリは圧倒的な数でたびたびやってきて、オオアリをはじめ様々な生き物を狩っていく。
 オオアリたちは、壁や天井の板の隙間からワッと溢れてあちこちに散らばり(天井から降ってくることもある)、グンタイアリに感づかれないようにじっとしていた。

 このままだと、グンタイアリがベッドまでやって来て、ぼくも刺されるかもしれない。さあ起きないと!

 グンタイアリはすでにいろんな影響を及ぼし始めていた。玄関のすぐ外にアシナガバチがたくさん飛んでいるのは、おそらくグンタイアリに巣をやられたためだろう。台所では、冷蔵庫の上の鍋にすむオオアリたちが、警戒態勢に入っていた。触角を立て、感度を上げて見張りをしているように見える。鍋の中が巣になっているのである。

 失礼して鍋の中をそっと見てみると、オオアリたちが卵や幼虫、サナギなどをアゴでくわえ、グンタイアリからいつでも逃げられるように準備していた。

鍋の中のCamponotus albicoxis アルビコクシィスオオアリ(ハチ目:アリ科:ヤマアリ亜科)体長:7~8 mm(写真クリックで拡大)

 台所のテーブルの上に置いてあるプラスチックの板の下にもオオアリの巣があって、そこからこんなふうに顔(頭)をのぞかせていた。ふだんこんな「警戒」態勢はとらない。

 朝食をとっていると、グンタイアリたちがやってきて、ぼくが履いている下駄の周りをたくさん通り過ぎて行く。そして瞬く間に下駄に上り、靴下や鼻緒の周辺を「嗅ぎ」始めた。さらにアリはお尻の針を突き刺してきたものの、ぼくは靴下を2枚重ねで履いていたので皮膚まで到達することはなかった。

 寝室をちょっと覗くと、そこはすでにグンタイアリたちに「占領」され、足の踏み場がなくなっていた。ぼくはしばらく外へ避難して、グンタイアリの数が減るのを待つしかなかった。

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パルビスピナム バーチェルグンタイアリ(ハチ目:アリ科:グンタイアリ亜科)の兵隊の針と毒
Sting of an army ant, Eciton burchellii parvispinum soldier, showing venom
ピンセットで兵隊アリのくびれた部分を優しく掴むと、お尻の先から針を出したり引っ込めたりする。その際、透明の液体(毒)も出す。この毒は、すぐに白く乾き固まる。
針の長さ:約0.5 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)