想像以上の異形。巨大環もつ太陽系外惑星の姿

噂の太陽系外惑星の想像図公開。土星の200倍の環

2015.02.03
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太陽系外惑星J1407bの周囲には、少なくとも30本の環からなる巨大な円盤が取り巻く。この円盤が主星の前を横切るには2カ月かかるという。(Illustration By Ron Miller)

 4年前に発見された太陽系外惑星J1407bは、地球から約430光年彼方にある恒星の周りを公転し、木星の10~40倍の質量を持つとされる。このほど、オランダ・ライデン大学のマシュー・ケンワージーらの研究により、土星のような環を持つことが明らかになり、この惑星の巨大な環の構造に関する彼らの論文が『アストロフィジカル・ジャーナル』に掲載される。

 確認されている2000ほどの太陽系外惑星の中で、J1407bは特に大きいわけではない。ただ、土星のような環があると考えられるものはJ1407bが初めてで、しかもその環は、上のイラストのように驚くほど巨大だ。これを太陽系の土星に当てはめた場合、土星の環が隣の木星との中間付近まで届いてしまうほどになる。

 J1407bの環が発見されたのは、まったくの偶然だった。2011年当時、米ロチェスター大学の大学院生だったマーク・ピコー(現在は米ロックハースト大学に所属)は、英国の太陽系外惑星探索プログラム「Super WASP」のデータをチェックしていた。彼が調べようとしていたのは、太陽系外惑星ではなく恒星のほうだった。ただ「Super WASP」のアーカイブには、さそり座-ケンタウルス座OBアソシエーションという若い恒星集団の回転速度など、恒星に関係のある情報も含まれていたため、データを調べようと考えたのだ。

 どの恒星にも特に珍しいところはなかったが、一つだけ目をひくものがあった。論文の共著者であるロチェスター大学のエリック・ママジェックによると、ピコーは一つの恒星の光が不思議な増減をしていることに気付いたのだという。「彼がプリントアウトしてきたデータを見たとき、とても変わったものを見つけたと確信しました」とママジェックは語る。

 通常、太陽系外惑星が主星の前を横切る軌道上にあると、主星の光が数時間わずかに暗くなる。しかし、ピコーが見つけた恒星は、しばらく暗くなったかと思えば明るくなり、またしばらくして暗くなるという変化が2カ月も続いたのだ。「最初は、カメラのノイズを見ているのだろうと思いました」とケンワージーは言う。しかし、観測データは正確なものだった。「私がこれまでに見たなかでも有数のきれいなデータでした」と彼は言う。

 彼らは、主星の前を惑星の環が横切るところを見ているのではないかと、すぐに考えた。ただ、惑星の環の通過することが原因としても、それが2カ月も続くためには、惑星の環はこれまで知られていないほど大きくなければならない。それほど巨大な環は考えにくいこともあり、研究チームは「宇宙塵などが通過するたびに星が暗くなっているのではないか」など、別の視点でこの現象を解明することも考えた。そして1年に及ぶ検証と熟考の末、巨大な環をもつ惑星が原因との結論にいたった。

 この主張は大胆なものだった。「惑星がそこまで巨大な環をもつことに、天文学者たちは懐疑的だった」とママジェックも言う。今回の分析で、J1407bの環の構造をより詳細に解明し、この環が観測どおりの明滅パターンをつくり出すことを示して、ようやく彼らの疑念を払拭できた。

若い恒星系にある惑星なのか?

 J1407bがある恒星系は誕生から1600万年しかたっていない(太陽系は誕生から45億9000万年たっている)。J1407bの環がそんなに新しいものであるなら、太陽系の歴史の早い段階で土星に起きたように、そう遠くないうちに環の外側の部分が収縮して衛星が形成されるはずだ。今回の発見が、恒星系のそのような過渡的な段階をとらえたものだとしたら、これも驚くべき偶然である。

 ペンシルベニア州立大学の太陽系外惑星の専門家エリック・フォードは、「一時的に複雑な環が形成される可能性もあるでしょう」と言う。ただフォードは、若い恒星系を発見したと結論づけることに懐疑的だ。「そもそも、短期間に変化する現象をとらえられることがいかに難しく、可能性がいかに低いものかを、よく考えなければなりません」

 環の中心にあるとされる惑星が、環と違って観測しにくいという事実も、今回の発表の信頼性を左右するポイントとなっている。ただ、天文学者は推定するしかない。地球からこの惑星を観測する角度では、惑星を見ることができない可能性もある(ケンワージーは、主星の光の増減をこの仮説でうまく説明できることを示すアニメーションを製作した)。

 もう一つ問題がある。J1407bの環があるとしても、恒星の前をまだ1回しか横切っていないことだ。ハーバード大学の天文学者デビッド・キッピングは、「1回しか観測されていない現段階では、やはり懐疑的にならざるをえません」と言う。

 だからと言って、J1407bの環の存在が否定されたわけではない。ママジェックとケンワージーらは減光を再度観測しようとしている。この分野で実績のあるアマチュア天文学者グループ「米国変光星観測者協会」の協力もとりつけた。

 大成功をおさめたNASAのケプラー太陽系外惑星探索ミッションの中心メンバーであるナタリー・バターリャは「今後の観測でパズルの新しいピースが手に入るにしたがって、どんな全体像が見えてくるのか楽しみです。やはり、最初の環を持つ太陽系外惑星であるとの結果になるかもしれません」と語った。

文=Michael D. Lemonick/訳=三枝小夜子

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