やがて、モーテルやガソリンスタンド、さらにはショッピング・モールが道路沿いに見えはじめ、ダルースの町に到着したことがわかりました。

 町の中心へ近づいていくと、目の前に、海のように大きなスペリオル湖が広がりました。

 ゆっくりと旋回しながら、坂道を降りはじめたころ、デイビッドに、目的地の住所を改めて伝えました。

 4番通りに入ると、あとはまっすぐ、突き当たりまでいくだけです。

 住宅地に入ったとき、ぼくははっとして、曲がり角に来る度に、窓の外をまじまじと見つめました。

 探していたのは……重そうなリュックを背負って、坂道を汗だくで登ってくる自分の姿でした。

 この先、なにが待ち受けているのか、まったく知らないあのときの自分がなつかしく、街角のどこかに、まだいるような気がしてならなかったのです。

 車はやがて、見覚えのある一軒家の前で、止まりました。

「ここが住所の番地だね?」

 デイビッドのいう通り、ぼくはグレッグの家、つまり、ヒルサイド・ホステル・インターナショナルに辿り着いたのです。

 自分の家を旅行者に開放し、まるで修行僧のような、慎ましい暮らしぶりをしていたグレッグ。

 イリーまでの移動手段がなくて途方に暮れていた3ヶ月前、グレッグのその姿をみて、ぼくは、この人なら夢の話をしても、きっとまじめに受けとめてもらえるだろうと思いました。

 その予感は的中し、車を出してもらえることになり、さらに、ここに泊まった夜、借りた地図を眺めたことで、ジムの小屋の場所が、ムース湖の畔にあることに気がついたのです。

 だから、ぼくにとってこのホステルは、その先に広がっていた森と湖の世界へと続く門のような場所であり、グレッグは、その扉を開いてくれた最初の人物でした。

 ここに辿り着き、グレッグに再会することで、ぼくは、ようやく、自分がやってきた世界へと帰ることができるような気がしていました。

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