TPPや経済支援の意外な共通項?「比較優位の原理」

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉が大詰めを迎えています。ご存じのように、TPPは貿易協定です。振り返れば、第二次世界大戦が終わった1945年以降、国際貿易の拡大は、世界の経済成長に大きく貢献したと考えられています。

 貿易は先進国だけではなく、インドやブラジル、中国のようなそれに続く国々の双方に利益をもたらしたと言えるでしょう。でも、貿易に関わる問題がないのかといえば、国の間のあつれきはそう簡単に消えることはありません。例えば、先ほど挙げたTPPのような新しい国際貿易ルールの登場は、自由貿易と保護貿易とのバランスが変わることを意味します。ルールの変更は、ある人にはメリットに、ほかの人にはデメリットになるわけですから、TPPが国論を二分するテーマとなるのは当然のことでしょう。

 国際貿易でよく登場する経済理論が、英国の経済学者リカード(1772~1823年)の「比較優位の原理」です。これは、貿易や国際分業のメリットを唱えた理論。リカードは、自由貿易のもとでは各国は製品やサービスに得意分野をもつべきで、それらを別の得意分野をもつ他国と貿易することが両国にとって最適だとしました。

 「比較優位の原理」自体は高校の教科書にも載っています。でも、大学で経済学を勉強した人であっても、意外に混乱してしまうのが「比較優位」と「絶対優位」の違いかもしれません。リカードの説はこうです。A国とB国、どちらも服とワインだけを生産するとします。服とワインどちらも、A国のほうがB国より優れた生産能力をもつとしましょう。つまりA国は両品目の生産で「絶対優位」にあります。リカード以前は、この場合、A国はB国と貿易しても得るものが何もないと考えられていました。

絶対劣位でも比較優位があればいい

 しかしリカードは、それぞれの国が相対的に優位なもの(比較優位)に特化すれば、労働量は同じでも、結果として、服とワインの総生産高がそれぞれ増加すると主張しました(特化することで労働生産性が上がるので生産量が増え、それだけ消費できる財が増えるわけです)。つまり貿易すれば、両国ともさらなる利益が得られます。

 整理すると、B国はA国に対して絶対優位な産業がなくても(絶対劣位であっても)、B国がワインよりも服の生産が得意なら、B国は比較優位の服の生産に特化すればいい(A国に対して優位なものがなくてもいいのがポイント)。そうすれば、A国のワインとB国の服を合わせた生産量は、それぞれが国内でワインと服を生産する場合に比べて増える、という驚くべき原理です(それぞれの国で不足するワインや服は、貿易で相手の国から得ることになります)。

 それぞれが、相手に比べて圧倒的に優位な産業をもつ国同士(双方が絶対優位の状態)で貿易すれば、効率が上がって生産量が増えることは容易に理解できますが、他国に対して絶対劣位な産業しかなくても、比較的得意な産業に特化して貿易すれば豊かになるという「比較優位の原理」は、私たちの固定観念を覆す目からウロコの経済理論です。