最終話 惜別と感謝と、新たな地平

 けれど、月日が経ち、パンダが歳をとり、橇を引くことができなくなったとき、2人は1つの決断を下さなければならなかった。

 ペニーさんは、話しながら大粒の涙をこぼしはじめた。

 厳しい自然のなかで共に生き、愛して止まない存在であっても、人間の食べ物だけでも厳しいこの森のなかの生活では、その貴重な食料を、新しい若い犬たちに回さなければならなくなる。

 そして、橇が引けなくなった犬の“安楽死”という問題と向き合わなければならないのだ。

 悲しい事実だけれど、橇犬はペットではない。

 橇犬というのは働く動物であり、使役ができなくなったとき、マッシャーは大きな決断と大きな覚悟が迫られる。

 単に犬が好きなだけでは、マッシャーにはなれないのである。

 トーニャもまた、自ら多くのサヨナラを決断してきた。

 願わくは、引退後の犬たちが、のんびりと老後を送ることができればいいが、経済的に現実はそうはいかない。

 私たちはただ、犬たちの時間がゆっくりと流れることを祈り、そして短い時間を精一杯愛してあげることしかできないのだ。

 そんな話をペニーさんとしていると、私は無性にソルティーのことが思い出された。

 早く帰って、ソルティーと走りたい。ソルティーを走らせてあげたい。

 その日は、伝統的な罠師であるトムさんの猟について行ったり、新しいログキャビンを作るための丸太切りを手伝ったり、毛皮のなめしを教えてもらったりして、貴重な時間を過ごした。

 そして再び犬橇を出して、ロッジに戻ると、私はトーニャに言った。

「やっぱり、ソルティーと走りたい」

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