カリフォルニアの大樹、過去80年で半減

最大の要因は水ストレス、米国の調査

2015.01.26
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成長すると高さ70メートル、直径1.2メートルにもなるポンデローサマツ。カリフォルニア州の大木の数は1930年代に比べて激減している。(Photograph by Raul Touzon, National Geographic Creative)

 米国カリフォルニア州に生育する大木の数が1930年代に比べて半減しているという研究が、学術誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に発表された。水ストレスが大きく関わっているという。

 広さ12万平方キロを超えるカリフォルニア州の森林地帯では、直径が2フィート(約60センチ)を超える木の数が50%減少した。この傾向は、霧深い北部海岸やシエラネバダ山脈、またロサンゼルスの北に位置するサンガブリエル山地においても変わらない。シエラネバダの高地では、大木の数の減少率は55%を超え、州南部では75%近い地域もある。

 要因は多岐にわたると言うのは、カリフォルニア州魚類野生生物部の生態学者で、今回の研究の主執筆者であるパトリック・マッキンタイア。たとえば伐採業者たちは、大木を好んで切り倒してきたし、宅地開発によって森は切り開かれた。山火事が短時間で鎮火されるようになったことも要因の一つだ。かつては火事によって排除されてきた小さな木々が増え、大きな木と水や養分を取り合うようになった。

 しかし1920年代と1930年代に行われた同州の森林調査と、2001年から2010年にかけて行われた調査の結果を比較したところ、伐採や開発とは無縁の森林でも大木が大きく減っていることがわかった。

 最も劇的に減っていたのは、水不足が特に深刻な地域だった。マッキンタイアらはコンピュータモデルを用いて、降水量、気温、土壌の水分、雪解けのタイミングといった要素を基に「水ストレス」を算出。森の木々が、必要とする水の量に対して、実際にはどれだけの水を得ていたかを調べた。

 マッキンタイアによると、1930年代以降、カリフォルニア州における水ストレスが増加した最大の要因は、気温の上昇であるという。気温が上昇すると、木はより多くの水分を空気中に放出するようになり、また雪解けが早まることで、乾期の間に木々が使える水の量が減少してしまうのだ。

最大の「被害者」はマツ

 マッキンタイアらの研究結果は、以前に行われた比較的小規模の調査の結果とも一致する。2009年に発表されたこの研究では、1930年代以降、ヨセミテ国立公園の大木の数が25%近く減少したことが報告されている。中でも特に減少が激しかったのは、ポンデローサマツ、サトウマツ、ジェフリーマツといったマツの仲間であった。

 今回の研究においても、カリフォルニア州全域でこれと同様のマツの減少が見られた。しかしマッキンタイアによると、同州のシンボルであるセコイアスギの仲間が影響を受けているかどうかを判断するには、十分なデータが揃っていないという。

 大木は一般的に水不足に弱い。その理由は定かではないが、おそらくひとつには、背の高い大きな木の方が、根から葉へ水を送る体内の水圧系が、水不足の影響を受けやすいためだろうと、マッキンタイアは言う。またユタ州立大学の森林生態学者で、ヨセミテ公園の研究の主執筆者を務めたジム・ルッツは、もうひとつの理由として、現在ある大木はその多くが数世紀前に発芽しており、当時はカリフォルニアの気候が今よりも寒冷だったことを挙げている。

「現在の大木がぐんぐんと成長していた時期には、そうした気候に非常によく適応していたのでしょう。当時の気候は現在と同じではないのです」とルッツは言う。

 カリフォルニア州では大木の数は減っているものの、直径1フィート(約30センチ)以下の木の数は州全域で大幅に増加しており、また直径1~2フィートの木が順調に育っている地域も少なくない。

 しかし同州の森の変化に気候が関わっているもうひとつの兆候として、マッキンタイアらは、マツの仲間に代わってオークの仲間が増加していることを指摘する。オーク類はシエラや北部海岸で増加しており、一方のマツ類はすべての地域で数を減らしている。

 こうした傾向は、気候が温暖化する時期に見られるものだとマッキンタイアは言う。15万年前の花粉の研究から、オーク類が今よりも温暖で乾燥した時代に栄え、マツ類は比較的寒冷な時代に栄えたことがわかっている。

気温の上昇が大木を減らす

 カリフォルニア州の大木にとって、未来の展望は厳しい。2100年には、同州の平均気温は20世紀末に比べて最大5℃も上昇し、植物の水ストレスは30%増加すると、マッキンタイアは言う。

 米プリンストン大学の生態学者ウィリアム・アンデレグは、西部地域の森の「低木化(shrubbification)」の傾向を嘆いている。乾燥が続けば小さな木が増え、森の木々はさらに密生した状態になっていく。「悠然とそびえるカリフォルニアの大木が失われるというのは、考えただけでも胸を大きく揺さぶられます」とアンデレグは言う。「あの大木は、何千年も前からこの土地で生きてきたのです。大木を失った未来の森からは、現在のような神秘的な雰囲気も消えてしまうでしょう」

 人々の心情にとってもそうだが、大木は生態学的にも重大な役割を果たしている。多くの種子を作り、山火事の被害に耐え、小さな木よりも大量に炭素を蓄積する。大木の洞には、ニシアメリカフクロウやモモンガといった希少な動物が暮らしている。

 だからこそ、そうした大木を失うことは、カリフォルニアの森の健康に重大な関わりを持っているのだと、ワシントン大学の森林生態学者ジェリー・フランクリンは言う。「多くの観点から見て、大木を失った未来は明るいものとは言えないでしょう」

文=Warren Cornwall/訳=北村京子

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