特集ダイジェスト

有害な廃棄物による汚染が深刻で、浄化が必要だとされる場所が全米に1700カ所以上ある。そして、こうした汚染地の近くに約4900万人が暮らしている。

 米国では現在、約6人に1人が汚染の深刻な廃棄物処分場から5キロ以内に暮らしている。こうした場所に適用されるのが「スーパーファンド・プログラム」だ。この制度は、有害物質による汚染が原因の災害や深刻な土壌汚染から国民を守るため、1980年に創設された。

 きっかけとなったのは、ニューヨーク州ナイアガラフォールズのラブ・キャナル地区をめぐる論争だ。廃棄物処分場の跡地に開発された住宅地ラブ・キャナルでは、地中から有毒な化学廃棄物の入ったドラム缶が大量に見つかり、廃棄した化学メーカーのフッカー・ケミカル社に対する抗議運動が巻き起こった。そして、多くの米国人が「自分の近所でも同じことが起きているのではないか?」と不安を抱くようになった。

プルトニウム、毒ガス兵器、農薬……汚染源はさまざま

 スーパーファンド・プログラムが適用された場所は全米に1700カ所以上あり、その背景はさまざまだ。たとえば、ワシントン州ハンフォードの1520平方キロほどの土地では、第二次世界大戦中のマンハッタン計画以来、原子炉で原子爆弾用のプルトニウムが作られてきた。鉱山跡地もある。モンタナ州ビュートにあるバークレー立坑では、かつて銅の露天掘りが行われていた場所に、有毒物質を含む水がたまっている。そのほか化学製品の工場や金属製錬所、かつて薫蒸剤を浴びた穀物倉庫などもある。

 汚染地と共存する方法はあるのか? コロラド州デンバー近郊にある旧ロッキーマウンテン兵器工場では、第二次世界大戦中に米軍がマスタードガスを作り、後に神経ガスのサリンも作っていた。その後、シェル・ケミカル社が農薬のディルドリンを製造。廃液をためた池は、汚染物質のブラックホールと化した。

 生物学者のシェリー・スキッパーが初めてここを訪れたのは1990年代前半のことだ。半長靴を履き、防毒マスクとゴーグルを装着して、汚染を監視するためにムクドリを調査した。ムクドリが食べる昆虫にディルドリンが蓄積していたからだ。
 スキッパーには忘れられない出来事がある。ある春の日、ミミズを食べた鳥が、痙攣を起こして木から落ちたのだ。「二度とあんなことがあってはなりません」。彼女はそう話す。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年2月号でどうぞ。

編集者から

 「スーパーファンド」に関する記事が予定されていると聞いたとき、「金融もの? ナショジオにしては珍しい企画だな」と思いました。そして、それは大きな勘違いで、自分の無知を恥じました。
 廃棄された化学物質による汚染が著しく、近隣住民の健康が脅かされている土地などを、米国政府は「スーパーファンド・サイト」に指定し、浄化を進めています。この「スーパーファンド」とは、そうした作業の費用をまかなうために創設された基金のこと。廃棄物の埋め立て地や鉱山、兵器工場など、汚染の原因はさまざまですが、スーパーファンド・サイトは全米に1700カ所以上もあり、そのすぐ近くに4900万人が暮らしているそうです。
 汚染物質が原因の健康被害と、汚染地の浄化の難しさは、私たち日本人が大きな犠牲を払って学んできた(学んでいる)ことでもあります。米国の汚染地の記事を読みながら、自分たちの足元を考えてみるのも良いかもしれません。(編集S.O)

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