シーツのしわに身を潜め、私たちの顔の上で子づくりに励む…。小さなダニはどこにでもいる嫌われ者だが、多彩な姿と生態は驚きに満ちている。

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ダニの奇妙な世界

シーツのしわに身を潜め、私たちの顔の上で子づくりに励む…。小さなダニはどこにでもいる嫌われ者だが、多彩な姿と生態は驚きに満ちている。

文=ロブ・ダン/写真=マルティン・エッゲリ

 数年前、私はある賭けをした。
 人の毛穴にすむニキビダニに関することだ。ごく小さなダニで、待ち針の頭の上で10匹余りがダンスだってできる。だが彼らの本当の舞台は、私たちの顔の上だ。

 夜になるとダニたちは毛穴から出てきて顔の上で交尾し、日中は毛穴の中に戻って食事をする。ニキビダニは、現在のところ2種が知られている。だが、成人男女を対象に小規模な調査をするだけでも、未知の新種がもっとたくさん見つかるのではないだろうか。私はそんな可能性に賭けたのだった。

土の下からチーズの中まで多彩なダニのすみか

 生物学者はよく、こうした賭けをする(普通はもったいぶって「予測を立てる」という言い方をするが)。私の賭けは、進化と人間、それぞれの傾向への理解に基づいている。

 進化は往々にして、小さな生物を極めて豊富に生み出す。その一方で、人間は小さなものを無視しがちだ。たとえば水生のミズダニの仲間は、たいていの湖や池、さらにはほんの小さな水たまりにまで生息し、その数は1立方メートル当たりに数百匹、数千匹にのぼることも珍しくない。だが水中にもダニがいることを知っている人は、ごくわずかしかいないだろう。小さな生物の研究を仕事にしている私自身も、つい最近まで知らなかったほどなのだ。

 土の中には、中世の武器のように恐ろしげな口器(こうき)を備えた捕食性のダニがいる。サメのような歯や、強力なはさみをもったダニたちが、ミミズの掘った穴や砂粒の間に潜んでいるのだ。熱帯雨林の林冠や葉の表面、枝の付け根や着生植物の上にたまった土の中にすむダニもいる。ミモレットというオレンジ色のフランス産チーズは、ダニのおかげで熟成する。

 実のところ、ダニは世界を変えるパワーをもつと言っても過言ではない。ダニの働きは土壌の代謝を促進もすれば、遅らせもする。有機物の分解速度が速まるか遅くなるか、さらには農作物がすくすく育つか病気になるかも、ダニの関わり方次第だ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年2月号でどうぞ。

編集者から

 ダニといえば、人や動物に寄生して血を吸うイメージが強く、「社会のダニ」などと失礼なたとえにも使われる嫌われ者。でも、そんな輩は多種多様なダニ・ワールドのごくごく一部と知って、見る目が変わりました。なかでも驚いたのは、自分の大好きなチーズ「ミモレット」の熟成も、実はダニのおかげという衝撃の事実。知らないうちに、ダニのお世話になっていたわけですね。
 顕微鏡写真の名手マルティン・エッゲリがとらえたダニたちのポートレートは、ときに美しく、ときに奇っ怪。ちょっとした「モンスター図鑑」のようです。過去の特集に登場した「昆虫の卵」「花粉」「細菌」などの写真も併せて、ミクロの世界をお楽しみください。
 この記事のせいでダニのことがもっと知りたくなってしまった、という方には、ダニ学者の島野智之さんがダニのディープな世界を熱く語った本『ダニ・マニア』(八坂書房)もおすすめです。(編集H.I)

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