第16回 「夢はレム睡眠のときに見る」のウソ

 このような激情を伴う夢をみてしまうのは、情動を司る脳部位が一役買っている。例えば、鮮明な夢を見やすいレム睡眠中の脳活動を測定してみると、情動に関わる脳部位が睡眠中にもかかわらず活発に活動していることが明らかになっている。

 快感を司るドーパミン神経系が夢のトリガーになるならばハッピーな夢を沢山見ても良さそうなものだが、残念ながら事実は逆のようだ。夢の中では楽しい嬉しいなどのポジティブな情動よりも、むしろ不安感や恐怖感などネガティブな情動を経験することが多いとされる。その理由はよく分かっていない。人間とはやはり根源的な不安を抱えている生き物だからであろうか。

 さて以上の知識を元に、松の内も明けてしまったので、来年の縁起の良い初夢を見るためのコツを伝授したい。

 第1に大晦日に夜更かしせず十分な睡眠をとること。睡眠不足に陥るとポジティブな情報に鈍感になり、逆にネガティブな情報に過敏になることが知られている。悪夢の原因となりかねない。紅白歌合戦が終わったら普段通りに就寝しよう。

 第2に飲み過ぎないこと。アルコールは深睡眠を減らしレム睡眠を増やしてしまう。飲酒時は悪夢の頻度が高い。奥方の「飲みすぎないでよ!」などの小言はさらに悪夢を出やすくさせる。

 第3にストレスを発散すること。例えば、年末の大掃除を頑張れば適度な疲労と家族からの感謝で心地よい眠りへと誘われるであろう。

 来年の初夢に向けて年末と言わず今からじっくりと長期計画で休養と節酒、家族サービスを心がけていただきたい。ちなみに私は縁起を担ぐタイプではないので、いつも通りのグータラな寝酒と寝正月を過ごすつもりである。

つづく

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三島和夫著

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三島和夫

(イラスト:三島由美子)

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。医学博士。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。