第16回 「夢はレム睡眠のときに見る」のウソ
レム・ノンレムに関わらず夢を見るとはいえ、自然に目覚めたときに思い出す夢はレム睡眠中に見た夢が圧倒的に多い。ノンレム睡眠中に見た夢は覚醒後になかなか思い出せないからだ。一口に夢と言ってもその内容には濃淡があり、濃密な夢は思い出しやすい。そこで夢について少し分類してみよう。
まず鮮明で込み入ったストーリー性がある夢がある。夢の中での経過時間も長く、目覚めたときにその内容をかなり詳細に語ることができる、いわゆる我々が夢と聞いてイメージする夢らしい夢である。悪夢やセクシャルな内容の夢など強烈な情動(感情)を伴う場合もある。このような鮮明な夢はレム睡眠時に多い。
ただし夢にはもう少し曖昧なものも多い。ぼんやりとした考え、イメージ、音、声などの感覚体験を中心としたごく断片的な夢である。景色が見えたり、人と話したりするなど、何となくストーリーがあるものの全体として短めで脈絡がない。このような淡く短い夢はノンレム睡眠時に多い。
レム睡眠とノンレム睡眠の夢にはナゼ濃淡が生じるのであろうか? そのヒントはものを考える脳である大脳皮質の活動レベルにある。
睡眠中は大脳皮質の活動は低下するが、レム睡眠時には大脳皮質が活発となり、脳波も覚醒時に近い波形になる。下等動物でもみられるレム睡眠の最大の目的は「体を休める」ことであり、外敵が近づいた時に反応しやすいように脳活動は比較的高めに維持されている。人でもその名残があるのだ。レム睡眠中の鮮明な夢は活発な大脳皮質活動によって作られているのだ。
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