第16回 「夢はレム睡眠のときに見る」のウソ
いまさら正月の話題で恐縮だが、みなさんは新年にどのような初夢を見られたであろうか。
縁起の良い初夢としてよく知られているのは、
一富士(いちふじ)、二鷹(にたか)、三茄子(さんなすび)。
ここまでは有名だが、それ以降もあって、
四扇(しおうぎ)、五煙草(ごたばこ)、六座頭(ろくざとう)。
それぞれ、末広がり、上に登る、毛がない(怪我ない)など由来があるようだ。
残念なことに、このようなおめでたい夢、ほのぼのとした夢は比較的少ないのが普通だ。夢の内容はどちらかと言うと奇異で、非合理で、脈絡がなく、不可思議な内容であることが多い。不安や恐怖を伴うこともあり、時には悪夢を見てぐったり疲れて目覚めたり……。
考えてみれば夢というのは不思議な現象である。なぜなら「できるだけ何もしない」のが睡眠の大事な目的の1つだからである。エネルギー消費を抑えて乏しい食料環境の中で生き残ることが睡眠の大命題であるのに、夢を見るときに私たちの脳はかなりエネルギーを消費してしまうのだ。
睡眠には大きく分けてレム睡眠とノンレム睡眠があるが、レム睡眠は爬虫類や両生類などの下等動物にもみられる発生学的に古い睡眠である。レム睡眠では筋肉が弛緩し、無動状態となり、エネルギー消費量は低下する。これが生き残り戦略としての睡眠の始まりだと考えられている。一方、ノンレム睡眠はより高等な生物にみられ、特に霊長類など大脳皮質が発達した動物では主要な睡眠となる。
さて我々は夢をいつみているのだろうか、というのが今回のお題である。睡眠に詳しい読者の方は「レム睡眠=夢見睡眠」と覚えておられるのではないだろうか。夢は高等動物に特有の現象なのにノンレム睡眠ではなくレム睡眠と関連が深いとは考えてみれば奇妙なことである。
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