火星で行方不明の探査機が11年ぶりに見つかる

欧州宇宙機関の〈ビーグル2〉号が、ほぼ無傷の状態で見つかった

2015.01.21
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NASAのオービターが撮影した写真で、10年以上行方がわからなかった〈ビーグル2〉が発見された。着陸船、パラシュート、カバーは見事着陸に成功していたが、地球との無線が通じることはなかった。(PHOTOGRAPH BY NASA, JPL-CALTECH/UNIV. OF ARIZONA/UNIVERSITY OF LEICESTER)

 欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた無人火星探査機〈ビーグル2〉が見つかった。同機は2003年のクリスマスに赤い大地に向けて降下したあと、消息を絶っていた。

 はたしてビーグル2は着陸できたのか? できたのであればどこに? という10年来の疑問は解決されたが、無線がつながらなかった理由は、まだわかっていない。NASAの探査機〈マーズ・リコネサンス・オービター〉から送られた写真には、着陸予定地点から3マイル(4.8km)ほど離れたイシディス平原に、太陽電池パネルが半開き状態のビーグル2が写っている。

 同計画でミッション・マネジャーを務めた英国レスター大学のマーク・シムズ教授は言う。

「あれ以来、クリスマスが来るたびに、ビーグル2に何が起こったのかを考え続けています。でも正直なところ、その答えを知ることはないだろうと、ほぼ諦めていました」

 チャールズ・ダーウィンの〈H.M.S.ビーグル〉号にちなんで名づけられたビーグル2号計画は、数10億年前に繁栄していたかもしれない生命の痕跡を探すことを目的としていた。

この数10年の間に、たくさんの宇宙船が火星に訪れ、接近通過、軌道周回、着陸している。(ANNA SCALAMOGNA, NG STAFF. SOURCE: NASA)

 行方不明になった火星探査機は、ビーグル2が初めてではない。宇宙探査の歴史には、たくさんの例があふれている。いちばん有名なのが、NASAの〈マーズ・クライメート・オービター〉だろう。1999年に火星に到達した同機は、2つのエンジニアチームが別々の単位系(一方はフィート、他方はメートル)を使用していたために軌道投入に失敗し、破損に至った。

 1992年に姿を消したのは、NASAの〈マーズ・オブザーバー〉だ。原因は、火星への接近中に燃料パイプが破裂し、制御不能なスピン状態に陥ったためと言われている。

 ビーグル2計画で科学者のリーダーを務めた英国オープン大学の故コリン・ピリンジャー氏は、同機が消息を絶った直後の記者会見で、こう述べていた。

「火星への着陸は難しい。これは間違いありません。いま私たちは、定量化も予測もできない危険に直面しているのです」

 同氏は昨年5月に死去。宇宙船の運命を知ることはできなかった。

太陽電池パネルが開かなかった理由

 新しく得られた鮮明な画像からでも、ビーグル2に何が起こったかを知るには不十分である。同機は、現在も運用中の〈マーズ・エクスプレス・オービター〉から分離し、着陸には成功していた。それ自体は大成功であると、同計画でチーフ・デザイン・エンジニアを務めたジム・クレメト氏は言う。「それは、素晴らしくももどかしいことなのですが」

 しかし、何らかの理由で太陽電池パネルが完全に開かず、無線アンテナが露出しなかった。アンテナなしでは通信ができないため、地球からの制御はできなかった。

 パネルが展開しなかった理由には諸説あるが、その1つ、地表の岩にパネルがぶつかって開かなかったという説は、着陸地点が比較的開かれた場所であるとわかった今、可能性は低いだろう。

 太陽電池パネルが、着陸船のエアバッグに引っかかったと考えることもできる。あるいは、着陸時に探査機が物理的に損傷したのかもしれない。現在、原因を究明したいエンジニアたちが、さらなる画像を探しているところだ。

 しかし、彼らが見ているのは過去ではなく、未来だ。ビーグル2号計画に携わった科学者の多くが、ESAのエクソマーズ計画に参加している。同計画では、2018年にローバーを着陸させることを目指している。そのミッションは、ビーグル2やその他の火星探査計画と同じで、火星が生命体にとってどれほど住みやすい環境だったのか、さらには、実際に存在していたのかを究明することである。

文=Michael D. Lemonick/訳=堀込泰三

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