人生で2度目に書く、英文の手紙に苦労しながらも、ぼくは懐かしい気持ちでいっぱいでした。
9カ月ほど前、同じくジムに向けて書いた手紙。
弟子入りを願い、辞書を手に、何度も何度も書き直しました。
良い返事がきたらどんなに素晴らしいだろう。
でも、良くない返事がきたら、この先どうしよう。
書き終えてもまだ、そんな期待と不安とが、かわるがわる押し寄せてきたあのときの感情を、つい昨日のことのように思い出したのです。
結局、あの手紙は届かなかったけれど、今度は、面と向かって手渡すことができるので、行方が分からなくなる心配はありません。
でも、ぼくはふと思いました。
<もし……あの手紙が届いていたら、果たしてジムに会えただろうか?>
おそらく、無事に届いていたら、断りの手紙が戻ってきただけかもしれない。
返事が来なかったからこそ、ぼくはここに来る決心をして、その結果、ジムに会えた。
だとしたら、すべてが上手くいくことだけが、人生にとって大切なことではないのかもしれません。
夜が明け、森が明るくなった後、ぼくはレイヴンウッド・スタジオに向かって歩き出しました。
新しく手に入れたトランシーバーを試したいからと、ジムに朝から呼ばれていたのです。
すっかり馴染みとなったゲートをくぐり、スタジオに着いてジムとジュディに挨拶をすませると、ぼくは、昨夜書いた手紙を渡しました。
ジムは、「なんだい?」というふうに、すこし驚いたように手紙を受け取りました。
が、ぼくの意図をすぐに察してくれたのか、その場で手紙を開けて読んでくれました。