第2回 恐竜化石の「掘り出し方」

 腰の骨がちょうど「かご」のようになっていて、その中をほじくっていく。本来なら何も無いはずの腰の中。それなのに、次々と部位不明の骨が見つかる。
 「邪魔だな・・・」とつぶやきながら掘っていると、表面がごつごつしている骨にぶち当たる。こんな骨、腰の中にあるはずがない。おかしいなと思いながら、そのごつごつしている骨の表面を出してみると、大きな卵を縦に二分した片割れのような形をしている。最初はわからなかったが、もう半分が出てきて、それが何か、ようやくわかった。
 「ヨロイ竜の尻尾だ。尻尾の先端についている、ハンマーのようなこぶだ!」

 こんなこともあるもんだと感心しながら、こぶの先端からたどっていくと、つながった尻尾の骨が続く。なぜなのかはわからないが、尻尾は根元で180度折れ曲がり、腰の骨の中へと伸びていた。そして、尻尾の先にあるこぶまでが残っているという偶然だった!

 この尻尾を回避しつつ、大きな固まりを分割していかなければいけない。運良く、尻尾の真ん中あたりで亀裂が入っている。この亀裂を利用すれば、ダメージを最小限にして尻尾を取り出し、固まりを分割できるかもしれない。

 これまで1人でやっていた尻尾の発掘作業を、ユンと2人で手分けした。ユンはこぶの部分を、私は尻尾の脊椎の部分を担当した。どんどん掘り込んでいくと、尻尾の保存状態の良さがわかってくる。尻尾は複数の椎骨(ついこつ)でできているが、重い骨の固まりであるこぶを支えるように、ずらっとつながっている。

 掘り進んでいくと、表面がごつごつした骨が出てきた。「こぶにたどり着いたかな?」と顔を上げ、ユンの顔をみる。しかし、彼が作業している骨は、私の目の前にあるごつごつしている骨から、数十センチ離れている。こぶがもう1つあるのかと疑問に思いながら、ごつごつした骨の周りをもう少し掘り込んでいく。
 どうもユンが作業しているこぶとは違う。表面のごく一部だが、露出した骨の形はまるで皿のような形をしている。その“皿”の下側はざらざらだが、内側はざらざらしていない。不可解な形である。

 「ユン、何だと思うこれ?」
 するとユンも、「こっちからも、三角錐の表面がざらざらした骨が出てきた。こぶじゃない。ヨシの骨とつながっているのかな?」

 しばらく2人に沈黙が走る。顔をかしげ、角度を変えながら、この骨が何か考える。顔をほぼ逆さになるくらい回したときに、パズルが解ける瞬間が来た! ひらめいた私は大きく目を見開き、ユンの顔を見た。まるで鏡を見るかのように、ユンも私と同じ顔をしている。

 「頭だ!」
 2人は叫んだ。

ヨロイ竜のくちばしの化石。頭骨も発見した!

つづく

小林 快次(こばやし よしつぐ)

1971年、福井県生まれ。1995年、米国ワイオミング大学地質学地球物理学科卒業。2004年、米国サザンメソジスト大学地球科学科で博士号取得。現在、北海道大学総合博物館准教授、大阪大学総合学術博物館招聘准教授。モンゴルや中国、米国アラスカ州、カナダなど海外での発掘調査を精力的に行い、世界の恐竜研究の最前線で活躍中。著編書に『恐竜時代I 起源から巨大化へ』『日本恐竜探検隊』(以上、岩波書店)、『モンゴル大恐竜 ゴビ砂漠の大型恐竜と鳥類の進化』『ワニと恐竜の共存 巨大ワニと恐竜の世界』(以上、北海道大学出版会)など、監修書に『大人のための「恐竜学」』(祥伝社)、『そして恐竜は鳥になった 最新研究で迫る進化の謎』(誠文堂新光社)など多数。