第2回 恐竜化石の「掘り出し方」

 さらに掘り続けると、その平たい骨は1メートルほどの長細い骨だとわかった。腰の骨の1つである腸骨だ。しかも、肋骨と腸骨がつながっている。私たちは、これはバラバラの骨ではなく、骨がつながった状態の全身骨格であることを確信した。私は1人でガッツポーズをした。
 「やっと見つけた! 全身骨格だ」

 腰の幅だけで2メートル近くあり、形から、この恐竜がアンキロサウルスのようなヨロイ竜であることがわかった。モンゴル南部のゴビ砂漠にある、ここヘルミンツァフで以前発見された「タルキア」という恐竜である可能性が出てきた。ただ、それを確認するには、さらに特徴のある骨が必要だ。何でもよいが、できれば頭骨が欲しい。私の欲は増してきた。

 腰の骨の周りを掘るだけで1日かかってしまった。全身骨格であることを確信した私たちは、キャンプに戻ってみんなに報告した。みんなは半信半疑ではあったが、さらに数人、人を送り込むことに同意した。

 その日から、この骨格を掘り続けた。発掘地を広げるために、削岩機と発電機を投入する。風が強く、これまで掘ってきた砂が舞う。目や鼻、穴という穴に砂が舞い込んでくる。ゴーグルを付け、顔をバンダナで巻き、砂が入らないようにする。
 モンゴル人がひもを引き、発電機をかける。爆音が響き、削岩機を持っている私に親指を立てて、ゴー・サインを出す。斜面にいとも簡単に刺さる削岩機。これで一気に崖を崩し、作業を進める。目の前の削岩機が削る新しい岩に集中し、この骨格が全身であることを期待する。

露出した、ヨロイ竜の腰の骨の化石。腰の幅だけで2メートル近くあり、巨大。

 しかし、待っていたのは、その期待に反した結果だった。

 腰の骨しか残っていない・・・。胴体や頭があるはずの場所をいくら掘っても、軟らかい砂岩で、骨が出てこない。先端にハンマーのような「こぶ」がついているはずの尻尾はどうかと、腰の後ろの部分を一生懸命掘ってみる。しかし、尻尾も無くなっている。まるで、ちょうどお腹のところだけを残して、すべてを何かに切断されたかのように、腰の部分しか残っていない。
 悔しさのあまり、奥歯を噛みしめる。このヨロイ竜の頭骨や尻尾は、死後流されてしまい、保存されなかったのだろう。

 「腰の部分だけでもすごい発見だよ! これを掘り出して研究しよう」。ユンが私の肩を叩きながら、優しく声をかける。
 さっきよりもハンマーを叩く速度は落ちたが、目の前の巨大な腰の骨を掘り出すことに集中した。さっきまで、この巨大さに歓喜していたが、今はそれが憎しみに変わっている。
 「こんな大きな腰の骨・・・。大きいだけだ」

次々と見つかる不可解な骨

 周りの岩を外側から骨に向かって掘り込み、腰の全体像を把握する。どんなに周りを掘り込んで小さくしても、直径2メートルほどの大きな固まりよりも小さくできない。これでは掘り出したとしても、運び出すことすらできない。
 そこで私たちは、その腰の固まりを何とか分割できないかと模索する。狭い骨と骨のすき間を探し、それを皮切りに、大きな固まりを小さな固まりにして取り出す作業だ。世界各地で恐竜発掘を行っている私たちでも、かなり困難な作業だった。