犬がテレビに夢中になる理由

テレビの映像を前にしたイヌはさまざまな反応を示す。どう反応するかは、人間の場合と同じように個々の性格が影響するようだ。

2015.01.16
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ドッグフードのテレビコマーシャルを熱心に見つめるイヌたち。2012年、イヌをターゲットに英国で制作されたものだ。1分間のCMには、イヌの耳にしか聞こえない高周波の音が含まれている。(Photograph By Solent News, Rex Features / AP)

「家族の飼っているプードルは、テレビに動物が出てくると、画面に釘付けになってしまいます。あの子はテレビの中の動物をどうやって認識し、なぜあれほど強い反応を示すのでしょうか」。米ナショナル ジオグラフィックの公式サイトで写真編集を担当するマロリー・ベネディクトは、プードルの行動に常々疑問に感じていた。この記事では、その理由を解明してみたい。

 家庭で飼われているイヌは、人間と同じようにテレビの映像を感知できる。また、テレビの中の動物の姿も、テレビから聞こえるイヌが吠える「音」も、現実の世界と同様に、きちんと認識できる。一度も見たことがない動物がテレビ画面に現れても、イヌたちの反応は現実世界と変わらない。

 2013年に学術誌『アニマル・コグニション』に発表された研究によると、イヌはさまざまな動物(人間も含む)の写真の中から、視覚だけでイヌの写真を特定できるという。

 イヌと人間の感覚には異なる点もある。例えば、イヌの目はヒトよりも映像をすばやく感知する。米マサチューセッツ州タフツ大学の獣医行動学者ニコラス・ドッドマンは、毎秒表示できるコマ数が今より少ない古い型のテレビの映像は、イヌの目には「1920年代の映画」のようにチカチカして見えると語る。

 また米ビンガムトン大学が運営するサイト「Ask a Scientist(科学者に聞いてみよう)」によれば、イヌは「2色型」の色覚を持つため、黄色と青のみを認識するが、ヒトの色覚は「3色型色覚」で、あらゆる色を認識できるという。

 ケーブルテレビのHDTV(高精細度テレビジョン放送)チャンネル「ドッグTV」は、イヌのための特別な番組を放送中だ。同チャンネルの主任研究員も務めるドッドマンは、「ドッグTV」がイヌを惹きつける理由として、「HDTVは通常の放送に比べて1秒ごとのコマ数が格段に多いこと」、「イヌの2色型色覚に合わせた色彩に調整されていること」を理由として挙げる。

 「ドッグTV」では大きく分けて3種類の番組が放送されている。イヌをリラックスさせる番組では、イヌが草原でのんびりとくつろぐ映像が流れる。刺激を与えることが目的の番組では、南カリフォルニアでサーフィンを楽しむイヌの姿。人間社会と触れることでイヌが直面するさまざまな場面に順応できるようにする番組では、玄関のチャイムに反応したり人間の指示に従ったりするイヌが映し出される。

TVを見るイヌ、見ないイヌ

 テレビに対するイヌの反応は、ぐるぐると走り回ったり、激しく吠えたり、特に興味を示さなかったりとさまざまだが、そこには生物学的な要因以外にも、個々の性格や犬種が影響しているという。

「人間と同様、イヌにもそれぞれ個性があります。なわばり意識が強いイヌもいれば弱いイヌもいる。人を好きだったり、嫌いだったり。狩りが好きだったり、嫌いだったり。押しの強さもそれぞれ違います」とドッドマンは言う。「世界には、あらゆる性格のイヌがいる。むしろ、それがあたりまえなのです」

 テレビの中のイヌが吠えるのを聞くことで、自分も興奮するイヌも多い。さらにはテレビに映る動物に向かって吠えるだけでなく、相手を見つけ出そうとテレビセットの後ろにまわって探すイヌもいる。

 一方で「テレビ画面にイヌが映っても、反応が鈍いイヌもいます。イヌの映像を見ても、『あいつらはテレビの中にいて、実際にその辺を歩き回ったりはしないんだ』と考えているのでしょう」とドッドマンは言う。

 犬種による、テレビへの反応の違いはあるのだろうか? ハウンド種は匂いに敏感に反応するが、目に映るものへの興味はさほど強くない。一方でテリア種など牧畜犬は小さな画面の中で動くものに刺激を受けやすいようだ。

イヌも「ながら見」?

 ところで、留守にする際、飼い犬が寂しくないようにと、ラジオやテレビをつけたままにする人は多い。しんと静まり返っているより、音がしたほうが慰めになると考えてのことだろうとドッドマンは言う。

 ニュース番組に比べれば動物が出てくる番組が好ましいが、人間と同様、イヌもテレビをいつも真剣に見ているとは限らない。

「イヌは興味を持ったものに目を向け、しばらくの間じっと見つめて『へぇ、おもしろい』と思っても、後はそっぽを向いてしまうことがほとんどです」。それでも「飼い主がいない間、一日中暇を持て余すより、テレビを見るほうがいいはずです」

 イヌが視聴するテレビ番組がある時代。ツイッターでイヌがつぶやく日も、いつか来るかもしれない。

文=Liz Langley/訳=北村京子

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