急激な温暖化に適応するヒメウミスズメ

最新の研究が解き明かす“北のペンギン”の捕食行動の変化と課題

2015.01.16
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海で動物プランクトンのカイアシ類を捕食して巣に戻るヒメウミスズメ。(Photograph by Paul Nicklen, National Geographic)

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 “北のペンギン”とも呼ばれるヒメウミスズメが、急速に温暖化が進む北極に驚くほど適応していることが最新の研究で明らかになった。気候変動の影響で少なくなった食料を補うため、やはり気候変動のせいで氷河から解けだした冷水で気絶するようになった獲物を捕らえているのだ。

 1月12日付で「Global Change Biology」誌に掲載されたこの研究は、氷が消失する北極でヒメウミスズメの捕食行動を初めて調査したものだ。ナショナル ジオグラフィック協会が支援する調査プロジェクトの一環として、ロシア最北部にあるフランツ・ヨーゼフ諸島で観察が行われた。

 2005年以降、ヒメウミスズメが生息する海域では、実質的に夏の海氷が見られなくなった。それに伴いヒメウミスズメの重要な食料源である動物プランクトンの数が減少した。動物プランクトンはたいてい海氷の周りに集まっていたが、氷がなくなった今、鳥たちは陸上の氷河から流れだす冷水によって気絶した動物プランクトンを食べるようになり、捕獲も以前に比べて容易になったという。

 とはいえ、この変化に滞りがないわけではない。ヒメウミスズメの雛は2005年以前と同じ速さで成長している一方で、成鳥の体重は1990年代初頭以降、平均で4%減少している。それほど多く聞こえないかもしれないが、「体重がどれぐらい減ったら鳥たちに実害が及ぶか、まだわかっていません」と、研究の共著者でナショナル ジオグラフィックの協会付きエクスプローラーのエンリック・サラは言う。

なにが課題か

 ヒメウミスズメは、気候変動の影響を特に受けやすい種と考えられている。また、生態系の変化に対し危険信号を発する北極の指標種として扱われることが多い。

「ヒメウミスズメが今のところ適応しているのは朗報です」とサラは述べ、「ただ、生態系は絶え間なく変化していて、どれぐらい長く持ちこたえるかはわかりません」と付け加えた。

 ヒメウミスズメは北極の生態系において重要な役割を果たすため、その変化は他の生物にも影響を及ぼしかねない。

全体像

 今日にいたるまで、北極では低緯度の地域に比べて2倍の速さで温暖化が進んできた。国連の気候変動に関する政府間パネルによると、2030年代までに夏の海氷が実質的に消失すると予想され、海鳥からホッキョクグマにいたる生物種への深刻な影響が懸念されている。(同様の影響は南極周辺でも起きている)。

 北極に暮らす生物の数種が絶滅するだろうと研究者らは警告するが、個々の種がどのように適応していくかは正確には把握されておらず、この研究が示唆するように、いくつかの驚きが待ちうけているだろう。

今後の予測

 今後180年の間にフランツ・ヨーゼフ諸島のすべての氷河が消失するが、解け出す水の量はそれ以前に著しく減少すると研究者らは推測している。その間、ヒメウミスズメが十分な食料を確保できるかどうかは定かではない。

「究極的には、われわれがヒメウミスズメやホッキョクグマ、そして影響を受けるありとあらゆる生命のためにできることは1つしかありません」とサラは言う。「それは温室効果ガスの排出を減らすことです」

文=Brian Clark Howard/訳=益永依子

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