第118話 耳が聞こえなくても……。

 そして次の朝、

 荷物の準備を済ませた私たちは、橇に繋ぐ犬たちを集めた。

 橇の準備をすると、犬たちは興奮状態になる。

「僕を連れて行って!」「私を連れて行って!」と叫び続けて、みんな走りたくて仕方がないのだ。

 リーダーのルーニーを橇に繋ぐと、相変わらずズルズルと鼻づまりのような音を立てていた。

 他の犬たちよりも鼻腔が狭いが、二度の手術で息は通っているはずだから、無理なく走れば、長距離も大丈夫だろう。

 それにルーニーは優しい性格をしているので、チームを落ち着かせる効果がある。とても重要で大切なリーダー犬だ。

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 そのルーニーに、「スタンド!(立っていて)」と指示を出す。

 すると自ら肩を前に突き出して、橇のラインをピンと張った状態で立っていてくれるのだ。

 そうしてくれることで、後ろの犬たちも繋ぎ易く、また、若い犬たちにとっては並ぶ手本にもなるのだ。

 ルーニーの横には、妹分であり、ルーニーからリーダー犬としての素養を学んでいるブロックスを繋いだ。

 この2匹は相性も良く、仲の良いコンビネーションでチームを引っ張っていってくれる。

 耳が聞こえないアンの横には、いつも体を押してアンに方向を伝えていたダイアモンドというオスを繋いでいたが、今回は、あえてアンをシングルで繋ぐことにした。

 広い視野を持って走れるように、スペースを作ってあげることにしたのだ。

 それに、アンもそろそろ、サポートに頼らなくても走れるはずだと考えたのだ。

 荷物を山積みにしたトーニャの橇は12頭立て、私の橇は8頭立て。