第39回  つぶすほどに美味しい イランの伝統料理

「イランはアメリカと国交がないのでマクドナルドやスターバックス コーヒーがないけど、僕はイランにもあればいいのにな、と思います」とレイザさんは言う。「実はイランの若者の多くがそう思っているんですよ」とエマミエさんも話す。「私は年に何度かイランに行きますが、多くの若者が欧米文化を取り入れようとしているのを感じます」

 昨年5月にイランの女性たちが、義務付けられているヒジャブ(頭を覆うスカーフ)を脱ぎ捨てて女性の自由を求めたことがニュースになっていたのを思い出した。「そこまで極端ではないけれど、ヒジャブをオシャレ感覚で被る子は増えています」とエマミエさん。いま、イランとアメリカの関係が改善しつつあるともいわれているが、それを望む若者たちの声を聞くという。

 だからといって、イランの文化を否定するわけではない。「この間、レイザとイランの砂漠地帯に行ったんです。そこで、ラクダ肉のアーブグーシュトを食べました。砂の中に鍋を埋めてフタの上で火を焚くんですが、このときは通常の食べ方なのに全部食べたんですよ」とエマミエさん。「土地とつくり方が違うからでしょうか。すごく美味しかった」とレイザさんが笑う。

 若者は正直でまっすぐだ。一時、見られなくなったディーズィースタイルのアーブグーシュトがファストフードとして人気を博しているように、伝統を受け継ぎながらも新しいものを取り入れる、そんなイランの変化に期待したい。

古都イスファハンのイマーム広場(左)。首都テヘランにはタワー「ボルジェ・ミーラード」がそびえ、高層ビルが立ち並ぶ(撮影=エマミエ・アバサリ)
エマミエさんとレイザさんが訪れたイランのカヴィール砂漠(撮影=エマミエ・アバサリ)

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮