第39回  つぶすほどに美味しい イランの伝統料理

 そうやって出された紅茶は香り豊かですっきりとしていた。そこへエマミエさん、「イランには伝統的な紅茶の飲み方があるんですよ」と言って角砂糖を一つ口に含んで紅茶を飲む。口の中で紅茶と角砂糖が溶け合うのを楽しむのだそうだ。無糖で飲むのが好きな私としては「甘すぎるんじゃないか」と躊躇したが、熱い紅茶と口の中ですーっと溶ける角砂糖の甘みに、寒さでこわばった体の力が抜ける。

「さて、アーブグーシュトをつくりましょうか」

 ナスリンさんが冷蔵庫から肉を取り出して言った。アーブが水で、グーシュトは肉という意味。つまり、「肉のスープ」ということだろうか。しかし、肉だけではなく豆や野菜もたっぷり入るという。

「だから栄養満点でヘルシー。肉は鶏や牛、ラクダなど、どれを使ってもいいですが、イランでよく食べられているマトンが多いですね」と説明するエマミエさんの横で、ナスリンさんが手際よく準備していく。

「豆は2種類。前日から水にさらしておいたひよこ豆とホワイトビーンズ(白いんげん豆)を入れます。それから、タマネギ、トマトにトマトペースト。味付けにはシナモンとターメリック、イラン料理によく使うドライレモン。塩・コショウも欠かせませんが肉を固くしてしまうので、後で入れます」

イランの羊の肉は脂が少ないため、まったく臭みがないという。日本では手に入らないので、脂の少ないふくらはぎの部位を使っている
具を入れてスパイスをなじませてから水をたっぷりと注ぐ。「イランの料理はスパイスやハーブをたくさん使うが辛くはない」とエマミエさん
手前がエマミエさんとナスリンさん、奥がレイザさん(左)とモハマッドさんだ。レイザさんは映画監督、モハマッドさんは画家を目指している。末娘のマリヤムさんは中学の部活動で不在だった