化石燃料は不可?――最新温暖化研究の驚くべき提言

産業革命以降の気温上昇を2℃未満に抑えるなら、化石燃料と決別しなければならない

2015.01.15
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ドイツの石炭火力発電所から蒸気が立ち昇る。(Photograph by Patrick Pleul, dpa/Corbis)

 世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑えるには、カナダのオイルサンド、北極の海底に眠る石油、世界中に埋蔵されている石炭などの化石燃料を新たに採掘すべきではない、という研究結果が、1月7日「Nature」誌に掲載された。

 産業革命前と比べた平均気温の上昇を2℃よりも低くすることは、各国が合意した国際的な目標となっている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、この目標を達成するには、2050年までの温室効果ガスの総排出量を1100ギガトン(1.1兆トン)以内に抑えなければならないという。

 しかし、「世界中で炭素税を課すなどして、各国の政策を劇的に転換しない限り、平均気温の上昇を2℃未満にするという目標は達成できないだろう」と、今回の研究を発表した英国ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)持続可能資源研究所(Institute for Sustainable Resources)の研究者らは指摘している。

 現実の世界は、理想とかけ離れた道筋をたどっている。国際エネルギー機関(IEA)によると、二酸化炭素の排出量は、2050年よりも10年早く1100ギガトンを超えると予想しているからだ。

採掘しても利用できない

 では、2050年まで排出量が基準値を超えないよう抑制するには、どの化石燃料を使わないようにすればいいのだろうか? この疑問に答えるため、英国UCL持続可能資源研究所の研究者たちは、二酸化炭素排出にかかるコストを考慮した場合、化石燃料の利用量がどう変化するかの経済的シナリオを、コンピューターでモデル化した。


経済モデルを用いた英国ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)による研究結果。二酸化炭素排出量の目標を満たす化石燃料の利用制限が地域別にパーセンテージで示されている。(EMILY M. ENG, NG STAFF. SOURCE: C. MCGLADE AND P. EKINS. NATURE)

 それによると、規制や法律で既に石炭採掘が制限されている米国で、埋蔵量の92%が利用できなくなるという結果が出た。ちなみに欧州が78%、中国とインドは合わせて66%だった。

 石炭が使えないなら、化石燃料の中でも天然ガスがその穴埋めになるだろうと論文の共著者クリストフ・マクグレードは述べる。「天然ガスは、将来の低炭素エネルギー化に向けた橋渡し的な燃料、あるいは中間的な燃料と言われます」

 「でも、天然ガスだけではエネルギー需要を満たすことはできず、再生可能エネルギーや原子力、バイオ燃料が必要になる」とマクグレードは指摘する。また、天然ガスの使用量もいずれは制限されて、2050年までに埋蔵量の半分が使えなくなるだろう。

 彼らの報告に従えば、中国とインドで63%、中東では61%の天然ガスが手付かずのまま地中に眠ることになる。一方、欧州と米国はそれぞれ11%と4%で、かなりの量が利用可能となる。その要因として、需要と供給の場所が比較的近いことが考えられる。

 また石油は、中東が世界中の「燃やせない」石油の半分以上、中東地域の38%を保有する。「カナダでは精製工程で生じる二酸化炭素をゼロにしない限り、オイルサンドを利用することができなくなるだろう」とマクグレードは述べ、北極海の底に眠る石油にいたっては、「燃やせない資源」と明言する。


カナダにあるオイルサンドの掘削現場。(Photograph by Peter Essick, National Geographic)

どちらをとっても代償が

 近年、温暖化対策の一つと期待されている二酸化炭素回収・貯留(CCS=Carbon dioxide Capture and Storage)だが、こちらを推し進めただけでは、化石燃料の利用量は大きく増やせそうにないことがわかり、マクグレードは驚いたという。CCS自体が比較的新しく費用がかかる技術であり、2050年までに効果を上げるには導入が遅すぎるし、規模も限られているとみられるためだ。「企業や資源保有国の多くは、CCSこそ百発百中の『魔法の弾丸』だと主張します。CCSさえあれば、どこでも何でも欲しいものがつくれて、我々を救ってくれると。しかし、研究の結果は、まるで違っていました」とマクグレードは言う。

 共著者であるポール・エキンズは、気候変動に関して各国の首脳がもっと真剣に考えるようになれば、化石燃料は利益を生まなくなると見ている。エキンズは「非合理的な経済行動が起きている」と指摘する。「数千億ドルもの資金をつぎ込んで化石燃料を見つけ出しても、将来、採掘できなくなる可能性があるのですから」。長期的には、排出量の目標に大きく焦点を当てることで、化石燃料への投資がますますリスクを伴うようになるとエキンズは考える。

 同氏は「最近の原油価格の急落は両刃の剣である」とも言う。化石燃料と比べて低炭素資源の価格は上昇しているが、原油価格の下落によって世界経済が後押しされている。最終的には、その結果として再生可能エネルギーが割安になるかもしれない。「この状況を利用して世界的に炭素税を導入し、変動するエネルギー価格を安定させることができれば理想的です」とエキンズは語る。

文=Christina Nunez/訳=益永依子

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