実際、日長時間の季節変動は多くの生物の行動に大きな影響を及ぼしている。例えば、動物では渡り、回遊、生殖などが、植物では花芽形成、落葉などが日長時間に応じて特定の時期に精確に生じており、このような現象を「光周性」と呼ぶ。

 光周性のメカニズムもかなり詳しく解明されていて、メラトニンがその鍵を握っている。メラトニンは体内時刻を体中に伝えるホルモンだが、別名Dark hormone(暗闇を伝えるホルモン)とも呼ばれる。というのも、メラトニンは昼にはほとんど分泌されず夜になると活発に分泌される特徴があり、日長時間に応じて分泌時間が変動するためだ。鳥やネズミなど多くの動物は日長時間をメラトニンの分泌時間の長短という信号に変換して季節を感知しているのだ。

 さて、人でも日長時間を通じて季節を感知する能力が残っているのであろうか?

 残念ながら、一般人ではその能力はだいぶ弱くなっているようだ。ワシントンD.C.の郊外にあるベセスダに居住する健康成人を対象にした調査では、夏と冬でメラトニンの分泌時間にまったく差が見られなかった。ベセスダは北緯38度53分、日本だと新潟や山形あたりにあり、それなりに日長時間の季節変動は大きい。

 なぜ人で日長時間の感知能力が衰退したかその原因は分かっていない。現代生活では人工照明が発達したため、日長時間の季節間差が乏しくなっているからであろうか。低緯度地域で進化の初期を過ごした人類が、その後に高緯度地域に移動していく際に、季節を感知できない人間の方がより多く生き残れたという説を唱える研究者もいる。

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